連載コラム「ゴム業界の常識・非常識」(26)
コロナでタイヤ産業はそれほど傷まなかった?
連載 2021-01-06
加藤事務所代表取締役社長 加藤進一
新型コロナウイルスの影響がずっと続いています。昨年1月末に新型コロナウイルスが中国武漢市で発生したあと、ヨーロッパ、北米、南米、アジア、インドと感染者が増え、日本でも4月に緊急事態宣言の発出となりました。昨年12月末でも日本の感染者は毎日3000名以上発生しており、感染の消息にはほど遠い状態です。
日本のゴム産業も昨年4月から急に生産が落ち、特に自動車用ゴム部品、タイヤの生産が大きく減りました。実際に4月から日本の自動車生産台数が大きく落ち込みました。下のグラフの通り、国内自動車生産(乗用車、トラック、バスの合計生産台数)は、前年同月比で、3月が92%だったものが、4月に54%、5月39%と大きく落ち込み、6月63%、7月78%、8月82%、9月99%、10月110%となりました。4、5月は本当にひどかったのです。
これに比べると国内タイヤ生産量(新ゴム使用量)は下のグラフの通り、4月が70%、5月が58%、6月が53%、7月が73%と自動車生産台数の減少ほど減ってはいません。
どうしてか?それは、タイヤ生産のうち、約60%が市販用(すり減ったタイヤの交換用)のものだからです。約40%の新車用タイヤは自動車生産台数にほぼ比例します。市販用タイヤは、新型コロナウイルスで経済活動が低迷しても、トラックは毎日走り回っています。産業素材を運ぶトラックは減りましたが、一方小荷物配送用トラックはかえって走行が増えているようです。但し同じ交換用タイヤでも航空機用のタイヤは需要が大きく減りました。
自動車ゴム部品製造メーカーでは、新車自動車生産に合わせてゴム部品を生産していますが、4月後半から6月にかけて大幅に生産を減らしました。2020年1~12月合計では2019年に比べて18~20%減が標準になっています。一方日本自動車タイヤ協会の資料では、2020年は2019年比で新車用タイヤで83%、市販用タイヤで89%、合計で87%となり、13%減となっています。
ある意味タイヤ産業は、新型コロナウイルスの影響では、自動車ゴム部品メーカーに比べて、それほど傷まなかったとも言えるでしょう。
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