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連載「つたえること・つたわるもの」(85)

令和の〈えんどう豆〉、どんどん発芽・成育中! 〈教育講演〉その3

連載 2020-03-10

◆「看護にお金を出すのは、当たり前のことなんだ」
 在宅看護研究センターLLP代表を務めるスーパー看護師の村松静子(せいこ)さんは、2011年に第43回フローレンス・ナイチンゲール記章を受賞された在宅看護の草分け的存在。1980年、日赤中央病院ICUの初代看護婦長となった村松さんは、退院後の療養に不安を訴える患者や家族の在宅看護の重要性に注目していたこともあり、「在宅ケア保障会」を結成して、主治医制での訪問看護ボランティアを開始したが、新たな依頼の急激な増加で、勤務時間外に行う「訪問看護のボランティア」に限界が見えてくるようになった。

 そんな折、遠藤さんとの対談で「看護にお金を出すのは、当たり前のことなんだ。このままボランティアで続けることは、とても無理だよ。会社を作ったらいい」と言われたことばに励まされ、1986年の春、赤十字病院出身の看護師二人半とともに在宅看護研究センターを創設したのである。

 その当時、病院や開業医に雇われる形で働く看護師(2002年までは看護婦)は、医師の指示があった場合以外には医療行為をしてはならないとされ、看護師だけでの開業は成り立たないと考えられていた。病院から街に飛び出したプロナース数名で開業したワンルームマンションの一室には、電話、ポケットベル、コピー機、ワープロ、医療用カメラ、聴診器、血圧計、吸引器など、最小限の装備しかなかった。

 2005年、雑誌『財界人』の取材で、村松さんは私にこう語っている。

 「在宅で求められる看護というのは、病院での看護とは明らかに違う。在宅ではそこに医療器具がなければ、手技だけでやらなければならない。救急時の対応も、単に救命のためではなく、その患者さんのからだを少しでも楽にすること、痛みをやわらげること、リラックスできるようにするためです」

 2010年には、日本で初の「メッセンジャーナース(医師:病院と患者:家族の懸け橋)」認定制度を発足させ、全国にいるプロナースのちからを結集しながら、「心あたたかな医療」を推進している。

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