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連載「つたえること・つたわるもの」(80)

中村哲医師、〈いのち〉のことば――100の診療所より1本の用水路。

連載 2019-12-24

 2001年には、アフガニスタン各地で米軍による大規模な9・11(NY同時多発テロ)報復爆撃が頻繁にあり、用水路建設のために岩盤を工業用ダイナマイトで爆破する音が米軍ヘリへの攻撃とみなされ、上空の戦闘機から機銃掃射を受けたこともあったという。なぜ、そこまでしてパキスタンやアフガニスタンの人たちのために、日本人医師である中村さんが自らの身命を賭して、日々の診療活動の枠内にとどまることなく、用水路建設を手がけることを決意したのか。

 中村さんの死を報じた新聞記事の中から、いくつか選んだ〈いのち〉のことば、を紹介する。

 ☆みんなが泣いたり困ったりしているのを見れば、誰だって「どうしたんですか」って言いたくなる。そういう人情に近いもんです。

 ☆ちょっと悪いことをした人がいても、それを罰しては駄目。それを見逃して、信じる、罰する以外の解決方法があると考え抜いて、諦めないことが大切。決めつけない「素直な心」を持とう。

 ☆道路も通信網も、学校も女性の権利拡大も、大切な支援でしょう。でもその前に、まずは食うことです。彼らの唯一にして最大の望みは「故郷で家族と毎日、三度のメシを食べる」ことです。(※アフガニスタンでは)国民の8割が農民です。農業が復活すれば外国軍や武装勢力に兵士として雇われる必要もなく、平和が戻る。「衣食足りて礼節を知る」です。

 ☆自分のしていることは平和運動ではない。農業ができて家族が食べていければ、結果として平和になる……。平和は(目的ではなく)結果でしかない。

 中村さんの訃報が届いた翌12月5日、講談社の漫画配信アプリウェブサービス『コミックDAYS』で、『アフガニスタンで起こったこと~不屈の医師 中村哲物語~ 前編』(作者は三枝義浩、2003年)が公開されていた。https://comic-days.com/blog/entry/2019/12/05/175700にアクセスすると、誰でも63ページにおよぶ、かなり詳しいストーリーが描かれた「中村哲物語」を無料で閲覧することができる。

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