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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、米中通商合意の期待で堅調

連載 2019-11-11


マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=180円水準まで上昇する展開になった。11月入りしてから世界的に株高傾向が強まる中、投資家のリスク選好性の高まりを受けて、コモディティ市場においても安値修正の動きが強くなっている。原油や銅相場などでも安値修正の動きがみられ、その流れの中で東京ゴム相場も7月30日以来となる約3カ月ぶりの高値を更新している。

 上海ゴム先物相場も、改めて1トン=1万2,000元台に乗せている。人民元相場は強含んでいるが、リスクオン環境を背景に再び1万2,000元台定着を打診する展開が続いている。

 米中通商協議に関して10月下旬は強弱が入り混じった報道が行われていたが、11月入りしてからは合意形成に対する期待感が一気に高まっている。まだ最終合意に至るのかは不透明だが、米中両国が制裁・報復関税の一部撤回を進める方向で調整が進んでおり、11月中、遅くても年内にはトランプ米大統領と中国の習近平国家主席が、合意文書に署名する可能性が高まっている。

 米中貿易戦争は、世界経済の見通しに大きな不確実性をもたらしていたが、米中両国が制裁・報復関税の撤廃に動き始めるのであれば、極めて大きな進展になる。米国株は過去最高値を更新しており、出遅れ感や割安感の強いコモディティ市場でもリスクオン傾向が強まると、一気に急伸する可能性が浮上する。

 一方、産地相場は底固く推移しているが、消費地相場と比較すると値動きの鈍さが目立つ。タイ中央ゴム市場では、11月7日時点でUSSが前週比2.8%高の1キロ=38.36バーツ、RSSが同0.9%高の39.84バーツとなっている。東京ゴム相場は同じ期間に4.0%高となっているが、産地相場は上値を追いきれていない。

 米中通商協議の進展が大きなポジティブ材料であることは間違いないが、①実際に合意形成が可能なのか、②どのような合意内容になるのか、そして③実体経済見通しの改善につながるのかなど、コモディティ市場では先行きに対して慎重な見方も根強い。

 11月中旬にかけては、米中通商合意の流れを確立できるのか、それを受けてゴム相場も本格的な上昇トレンドを形成できるか否かが打診されることになる。産地相場が上昇傾向を強めると、東京ゴム相場の上振れリスクが一段と高まる一方、このまま産地相場が伸び悩むと東京ゴム相場の反落リスクが高まる。

 また、東京ゴム市場では当先で20円幅の順サヤ(期近安・期先高)環境が維持されているため、サヤの過熱感を期近高と期先安のどちらが主導して解消するのかも焦点になる。

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