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連載コラム「ゴム業界の常識・非常識」⑲

日本の合成ゴムは世界一?

連載 2019-11-05

加藤事務所代表取締役社長 加藤進一

 日本のゴム業界の方々は、日本の合成ゴムが世界で一番だと思っていらっしゃるでしょう。確かにその通りです。開発力、グレードの豊富さ、製造方法での細かいノウハウと気配り、ユーザーへの手厚い技術サービス、そして供給に対するコミットメント、クレームに対する原因追及と対策。どれを取っても、世界でトップランナーの位置にいます。

 さて、これではこのコーナー、「ゴム業界の常識、非常識」の話になりません。今までの話を常識だとすると、そこはあえて、非常識な点をあげるとすると。。。

 5年後の日本の合成ゴムの立ち位置を「辛口」に考えてみます。

 SBR、BR
 一般グレードのSBR、BRはすでに10年前から汎用化してしまいました。この世界は生産規模が重要です。中国には日本のSBR、BR生産の3倍以上の工場が数多くあります。さらにそれらの工場能力が余剰になっています。これでは日本のSBR、BRは世界で戦えません。さらに韓国、台湾には日本より大きなSBR、BR工場があり、日本のタイヤメーカーも沢山使用しています。

 S-SBR
 今まで日本のS-SBRメーカー3社は世界一でした。技術、開発力、ユーザー群、どれをとっても、競争相手は3社以外にはいませんでした。しかし最近、韓国のLG CHEMICALをはじめ、世界の、特にアジアのS-SBRメーカーが日本のS-SBRメーカーを追ってきています。中国市場では、第三世代が一番人気があり、LG社がシェアーを伸ばしています。市場が汎用ゴム化をしはじめています。ボリュームゾーンでは、第五世代はまだ市場に受け入れにくい事情があります。

 ブチルゴム
 日本独自のブチルゴム技術はありません。

 EPDM
 現在世界ではEPDMの価格戦争が起こっています。DOWをはじめ米国の安いシェールオイルをベース原料にした米国のEPDMメーカーと、サウジアラビアの安い原料をベースにしたEPDMメーカーが市場でのシェアーを急速に取り始めています。年10万トンレベルの生産規模がないと、勝ち目がありません。もっとも中国で輸入EPDMにアンチダンピング課税が始まるとまた市況がかわるかもしれませんが。

 NBR
 韓国には元気のいいNBRメーカーがいて、アジア市場で大きな存在感があります。日本のメーカーは、特定ユーザー向けには強いのですが、世界市場を握れるかどうか?

 H-NBRでは世界の半分以上のシェアーを日本勢が持っていますが市場規模がまだ小さい。

 CR
 世界メーカーの中で日本の3社の生産シェアーは合計で60%に達します。CRの市場は今でも伸びています。その中で、日本勢が世界を引っ張っています。日本メーカーの影響力が強い数少ない分野です。

 シリコーンゴム
 日本には4社(純日系は1社)ありますが、規模では中国、韓国メーカーが存在感があります。この分野は自動車EV化でまだまだ発展していく可能性があるので、日本のシリコーンゴムメーカーに期待です。

 フッ素ゴム
 日本のD社はよい技術をもっていますが、ヨーロッパのS社は原料から持っており、世界では強豪です。

 その他特殊ゴム
 日本メーカーが頑張っていますが、市場規模がまだ小さい。

 こうして辛口に考えると、日本の合成ゴムメーカーがよいポジションでいられるのは、S-SBRとCRだけかもしれません。但しS-SBRは他社からの追い上げが今年に入り厳しくなってきています。今後は苦戦が予想されるかもしれません。

 下の表はクロロプレンゴム CRのメーカー生産能力(推定)です。



 辛口でしたが、これは日本の合成ゴムメーカーへの応援歌です。これからも頑張ってほしいものです。

 ゴム材料、ゴム製品のマーケットは、自動化、軽量化、高機能化、複合材料化、環境対応、SDGs対応、イノベーションが求められています。それに対応できる合成ゴムがでてくるでしょう。

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