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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、原油高で一時急伸するも

連載 2019-09-23



マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=173.90円(9月17日)まで値上りし、約1カ月ぶりの高値を更新した。しかしその後は高値を維持できず、170円の節目水準まで軟化し、前週比ではほぼ横ばいになっている。

 週末14日にサウジアラビアの石油施設が攻撃を受け、世界の原油供給の約5%が一時中断すると、週明けの国際原油相場は急伸した。東京市場は16日が敬老の日で休場となっていたが、連休明けの17日の取引で原油価格と連動した買い圧力が強まり、急伸地合が形成された。しかし、その後はサウジアラビアが原油供給環境の早期正常化の見通しを示したことで原油相場は反落し、つれてゴム相場も反落している。

 ここ最近のゴム市場では、必ずしも原油価格動向は重視されていなかった。一応は、原油高はナフサ高を通じて合成ゴム価格の押し上げ要因につながるが、天然ゴム価格に対する直接的な影響は限定される傾向が強くなっている。ただ、16日からの週は原油相場のボラティリティが著しく高まったこともあり、一週間を通じて東京ゴム相場は原油相場との連動性を強めた。目先は、原油相場の鎮静化が促されるか否かが焦点になる。

 上海ゴム先物相場も、週前半は原油高と連動した買いが膨らみ、1トン=1万2,000元台前半まで値上がりした。しかし、原油相場が上げ一服から反落すると再び1万2,000元台を割り込んでおり、結果的には明確な方向性を打ち出すには至っていない。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は、9月19日時点でUSSが前週比0.1%安の1キロ=40.09バーツ、RSSが同0.9%安の41.25バーツ。消費地相場は原油高連動で値上がりしたが、産地相場は横ばいから若干弱含みの推移になっている。産地の気象環境は総じて安定しており、集荷環境にも大きな問題は生じていない。消費地相場は投資家のリスク選好性の高まりや原油高などを背景にやや強含みの展開になっているが、膠着状態を維持している。産地相場が大きな値動きを拒否する中、消費地相場の値動きも限定的にならざるを得なかった。

 リスク投資環境は、総じて安定している。中東情勢の不安定化を受けて、9月入りしてからの急激な株高圧力は一服している。ただ、10月の米中通商協議で暫定合意に達するのではないかとの見方も強く、高値水準を維持している。

 東京ゴム先物のサヤは当先の間でほぼフラット化しており、限月間のサヤバランスは安定している。こうした点も、ゴム相場の膠着化リスクが高くなっていることを示唆している。

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