連載コラム「ゴム業界の常識・非常識」⑬
米中貿易戦争は日本のゴム業界に大いに関係あり
連載 2018-10-15
加藤事務所代表取締役社長 加藤進一
今年6月から中国と米国の間で貿易戦争が始まっています。米国の知的財産を中国側が盗んでいると米国が主張し、中国からの輸入品に特別関税をかけたところから始まり、両国とも覇権主義を掲げるのでお互い輸入関税をどんどんかけていき今のところ解決の糸口が見えていません。
ゴム製品、ゴム原材料で考えるとどうでしょう。7月に米国は中国製航空機タイヤに25%の関税をかけましたが、これはほとんど影響がありませんでした。中国製航空機タイヤは米国ではだれも使っていません。しかし9月17日から米国は中国製のすべてのタイヤ、ゴム製品、合成ゴムに、10%の輸入関税をいきなりかけ始めました。さらに2019年1月からは関税を10%から25%にひきあげると発表しています。
これは中国のタイヤ業界に大打撃となります。米国では中国製のタイヤは安いから売れています。ブランド名で売れているのではありません。米国内でタイヤ量販店のブランドやOFFブランドで売られているのです。大体1本4,000円ぐらいで売られています。これは10%、そして1月から25%も高くなれば、まったく売れなくなります。
そこで中国のタイヤメーカーは急に減産し始めました。中国生産タイヤの30%は輸出、その多くは北米向けでしたから、中国のタイヤ生産がいきなり20%程度減っているようなものです。実際には6月ぐらいから、中国のタイヤメーカーで輸出比率が多かった会社は今後米国政府が中国製タイヤに輸入関税をかけるだろうと予想して、タイヤの原材料の買い控えを始めていました。それが9月以降は新規原材料買い付けを10-20%程度減らしたようです。来年1月から25%の輸入関税とのことですが、今10月にタイヤ生産して、船で米国にもっていけば1月になってしまいますので、もうこれ以上はタイヤの米国向け輸出はできません。中国のタイヤメーカーの操業率は、2018年5月には75%でしたが9月は65%に下がりました。
こうしてタイヤ原材料の買い控えがおこり、その結果、天然ゴム相場価格は低迷し、合成ゴムの新規購入も減り、結果ブタジエンのアジア相場価格が、原油高、ナフサ価格高にあっても、下がり始めました。US$1,700/MTであったものがUS$1,300/MTまで下がりました。青島の天然ゴム+合成ゴム輸入品在庫量は、5月には17万トンでしたが9月は22万トンになり、売れずに在庫がたまりつつあります。
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