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連載「つたえること・つたわるもの」(38)

自分が考える「わたし」らしさ、相手が感じる「あいつ」らしさ

連載 2018-04-10

 「天職」という言葉がある。天から与えられた仕事、使命(ミッション)、ライフワーク(〈いのち〉のはたらき)である。長い仕事のキャリアを経て、初めて「これが天職だった」と気づく仕事のことである。

 「適職」という言葉もある。新卒の採用試験で行われる適性試験(能力検査+性格検査)は、企業にとっては未知数である学生の「仕事力」を推し量るもので、とくにコミュニケーション能力がポイントとなる。大学で行う就職活動の準備プログラムにも「適性検査」があるが、なかでも重視されるのが組織適応性などの「性格検査」である。「能力検査(筆記試験)」は、過去問参照である程度の対策が可能だが、二十数年かけて形づくられたパーソナリティ(性格)は、どうやっても隠すことができない。性格検査の結果は、新入社員の配属(部署)決定の重要資料となる。さらに、入社後も異動や昇進時には、「組織適応性」がモニターされるが、そのときに注意すべきなのは、直接の上司や人事課による客観的(他者)評価だけでなく、当該社員の仕事へのやる気や関心事の主観的(自己)評価も加えたクロスチェックが必要だということである。

 たとえば、社員研修などでよく使われる「ジョハリの窓」というグループワークがある。これは米国の心理学者、ジョセフ・ルフトとハリー・インガムが1955年に発表した「対人関係における気づきのモデルグラフ」に、二人のファーストネームの一部を冠して「ジョハリの窓」と呼ばれるようになったものだ。

 自分の心(窓)が描く「わたし」=主観的評価と、相手の目(窓)に映る「わたし」=客観的評価を、四つのマトリクス(図1)に書き出すグループワークである。お互いをよく知る仲間同士で、自分自身の性格と相手(仲間)の性格(印象)を以下の19項目から選んで、その番号を書き出す。

 ①頭がよい、②発想力がある、③段取り力がある、④向上心がある、⑤行動力がある、⑥表情が豊か、⑦話し上手、⑧聞き上手、⑨親切、⑩リーダー資質がある、⑪空気が読める、⑫情報通、⑬根性がある、⑭責任感がある、⑮プライドが高い、⑯自信家、⑰頑固、⑱真面目、⑲慎重



 自分が書いた番号と相手が書いた番号が同じ場合はその番号をA(開かれた窓)に、相手が書いて自分が書いていない番号はB(気づかない窓)に、自分が書いて相手が書いていない番号はC(秘密の窓)に書く。書かれた番号回数を「正の字」で表記(カウント)する。誰も書かなかった番号はD(未知の窓)に書く。

 そして、書き出された結果から、自分の心が描く「わたし」と他者の目に映る「あいつ」、主観的「自己評価」と客観的「他者評価」の違いを確認しながら、D(未知の窓)に書かれた番号から、「未知の自分」が潜在的にもっているが「まだ発揮していない」可能性を発掘するというのが社員研修の大きな狙いである。

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