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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、産地主導で底固い展開

連載 2018-03-19


マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1㎏=190円台前半から中盤にかけて底固く推移する展開になった。産地相場の堅調地合が維持される中、上海ゴム相場と連動して東京ゴム相場もじり高の展開になっている。為替相場が円高方向に振れたことが上値を圧迫したが、190円の節目割れからの値崩れを回避し、安値是正の動きが優勢になっている。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元台中盤から後半で底固い展開になっている。3月9日に突然の急落となったが、その後は急伸こそみられないが緩やかなペースで水準を切り上げており、東京ゴム相場に対しても買い安心感が強まった。

 産地相場が底固く推移する中、消費地相場に対しても買い圧力の強さが目立つ状況になっている。インドネシアやマレーシアでは週に50~200mm程度の安定した降水量が確保されているが、タイ、ベトナム、カンボジア、ラオスなどでは乾季が始まっており、季節要因に基づく価格支援効果が大きい。このまま産地相場が季節要因、更には生産国の市況対策の動きを反映して底固く推移するのであれば、上海・東京ゴム相場も堅調地合が想定されることになる。

 トランプ米大統領の保護主義政策の影響で、一部資源価格は大きく値下りしている。投資家のリスク選好性が後退していることもネガティブである。ただ、ゴム相場はこうした「貿易戦争」が警戒される中でも底固く推移しており、地合の改善を示唆することに成功している。

 一方で、中国の2月鉱工業生産は前年比7.2%増と前月の6.2%増から大きく上振れしたが、良好な指標を手掛かりに積極的に上値を試すような動きまでは見られなかった。

 上海ゴム相場は底固く推移しているが、産地相場の堅調地合と連動して1万3,000元台を回復するような動きがみられるか否かが注目を集めている。

 ただ、高水準の在庫環境が維持される中、ゴム相場の上昇余地は限定的との慎重な見方も根強い。例えば、全国営業生ゴム在庫は直近の2月28日時点で1万5,206トンとなっており、前年同期の4,601トンを大きく上回っている。こうした高水準の在庫環境からはゴム相場が上昇する必要性は存在せず、ここ最近の底固さに関しては一時的な上昇圧力との見方も根強い。

 円高、高水準の在庫、不安定なリスク投資環境といったネガティブも目立つが、産地相場の緩やかな上昇地合が維持されると、東京・上海ゴム相場に対しても現在の底固い展開が維持される可能性が高まることになる。

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