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 化学物質管理のスタートアップ、Dynagonは、医療機器・スポーツ用サポーターなどを展開する日本シグマックスと共同で、製造現場における化学物質管理の実情を踏まえた酷暑対策の提案に乗り出す。両社は9月3日、都内で合同記者会見を実施。酷暑対策のアドバイスを盛り込んだ管理サービスの新バージョンや、有害成分の飛散・蔓延の防止が欠かせない化学物質の取扱現場を念頭に置いた水冷服のメリットなど、それぞれの商材を訴求した。来夏の酷暑シーズン前までにサービスや製品の提供体制を整え、製造現場の支援と新規開拓に繋げていく。

㊧Dynagon代表取締役CEO 坂本 晋悟 氏 ㊨日本シグマックス ウェルネス事業部 大島 浩 氏

世界共通の情報管理

 両社の協力は、化学物質の安全データシート(SDS)管理のクラウドサービスを手掛けるDynagonが、製造業144社に実施したアンケート調査がきっかけになった。
 SDSとは、化学品に起因する事故の抑制を目的とした文書であり、化学品が持つ危険性や有害性の情報が世界共通の様式を用いて記載されている。日本の厚生労働省をはじめ、各国が定めた対象となる化学品の取引において、化学品を譲渡・提供する企業にはSDSの交付を、購入・使用する企業にはSDS情報に基づくリスクアセスメントをそれぞれ義務付けている。
 日本では重大事故の抑制に向けた規制強化として、2025年に労働安全衛生法が改正され、規制対象となる化学物質が段階的に拡大されている。SDS記載の対象物質は、2016年時点では674種だったが、2026年4月以降にはその約4倍近くの約2,300物質に増加した。

規制強化で業務負担増大

 化学品を提供する企業には、すべての自社製品について、2,300種類に増大したSDS対象物質のうち、どの物質を規定値以上に含んでいるのかを調査し、該当する場合には20件以上の関連法令を正確に把握した上で、その情報をひとつひとつSDSに記載する必要が生じる。
 さらに、化学品を購入する企業は、対象の化学品を使用する際、提供されたSDSを参照しながらリスク評価およびその低減対策を実施し、これらの記録を3年間保管する義務を負う。このため、対象物質の増加率を上回るペースで、
SDSを管理する現場担当者の業務負担が増加するケースが散見される。
 今後は同分野の規制で先行する欧州並みに、数千種以上の物質がSDSの対象になるとの見方もあり、さらなる負荷の増加が懸念される。
 こうした中、厚労省はSDS管理の効率化を支援するため、2026年7月1日~11月30日の期間限定で、化学物質管理をデジタル化する際に最大100万円の補助を実施している。
 Dynagonは、補助金の対象となる独自サービス「スマートSDSメイク」やSDS・リスクアセスメント管理ソフト「スマートSDSチェック」を展開しており、このところは従来、有償システムの導入が難しかった中小企業へのデジタル化の提案に力を入れている。

スマートSDSメイク(SDSを提供する企業向け)

スマートSDSチェック(SDSを受領する企業向け)

異業種コラボで二律背反解消へ

 その取り組みの一環として実施した今回の調査では、夏季の化学物質取扱作業で、有害物質から体を守る防護服の着用が熱中症の原因になるなど「『酷暑・熱中症対策』と『化学物質から作業者を守るための対策』の両立に難しさを感じる」とする回答が6割強を占めた。スポットクーラーなど送風機能を持つ冷却装置では、有害な成分を含有する粉じんや揮発成分の飛散・蔓延につながるので、現場で使用できないというジレンマが浮かび上がった。
 こうした声を受けて、Dynagonは、ペルチェ素子と水を組み合わせたハイブリッド機構で約5時間、安定した冷却を実現する日本シグマックスの水冷服「アイシングギアベスト(IGV)2」に着目。同社に協業を持ち掛け今回、合同会見を行うことになった。
 Dynagonの坂本晋悟代表取締役CEOは「まだ両社の具体的なビジネス協力はないが“二律背反”の関係にある化学物質管理と酷暑対策の課題解決が製造現場の安全確保に欠かせないことを広めたいという思いが一致し、合同会見を開くことになった」と連携の意図を述べた。
 日本シグマックス・ウェルネス事業部の大島浩氏は「IGV2は心拍数の増加を抑えられるなど、暑熱対策の効果を確認している。全館空調よりも大幅に低いコストで、化学物質取扱現場でも作業環境を改善できることを訴求し、採用を広げていきたい」と抱負を語った。

IGV2(右)と冷却機構のしくみの図(左)

【本記事は月刊ラバーインダストリー10月号に掲載】