ここ5年間の間に、ゴム原材料の価格が大幅に上昇してきました。天然ゴム、合成ゴム、カーボンブラック、ゴム薬品など、あらゆる原材料の価格が2倍近くになっています。

 日本経済新聞の商品欄に掲載されている合成ゴム(NBR、SBR)の大口価格推移(2012年〜2026年)をグラフ化しました。また、天然ゴムについても大阪取引所(旧・東京商品取引所)のRSS3先物価格・中心限月(取引量が最も多く、成約後6か月後引き渡しの価格)における2011年〜2026年の推移をグラフにまとめています。

各原材料の価格推移

合成ゴム: 2020年のコロナ禍では過剰在庫により一時的に下降したものの、2012年と比較すると価格は大きく跳ね上がっています。SBR1502は当時の200円/kg強から350円/kgを超え、イラン情勢やホルムズ海峡問題が緊迫化する2026年8月現在では500円/kgに迫る勢いです。中高ニトリルグレードのNBRも300円/kgから450円/kgへ、8月には700円/kg近くまで上昇しています。グラフには示していませんが、EPDMもかつては300円/kg程度だったものが、現在は500円/kgを超えています。

天然ゴム: 2011年の高騰以降は下落傾向が続き、2013年以降は概ね200円/kg前後で推移していましたが、2023年以降は徐々に上昇し、2026年8月現在では400円/kgを超えてジリジリと値を上げています。

カーボンブラック: かつては250円/kg程度でしたが、2026年5月には350〜400円/kg程度になり、8月には400円/kgを突破しました。

ちなみに、私がこの業界に入った40年前は、天然ゴムが100円/kg以下、EPDMが250円/kg、NBRが300円/kg、SBRが180円/kgほどでした。

なぜ近年、ゴム価格が高騰しているのか?

 最大の要因の一つは「円安」です。

 天然ゴムは東南アジアからの輸入品であり、価格は米ドルベースです。一方、合成ゴムの原料(ブタジエン、エチレン、プロピレン、スチレン、アクリロニトリル)はすべてナフサ、ひいては原油由来の化学品であり、大元となる原油はすべて輸入に頼っています。カーボンブラックも同様に、石油系・石炭系ともに輸入原材料が価格のベースとなっています。

 もう一つの理由は「国内製造コストの上昇と構造変化」です。

 近年、プラントの修繕費上昇や定期修理期間の長期化、設備更新費用の高騰が重なっています。また、将来的に事業を継続するためには、適切な採算性を確保せざるを得ません。

 25年前、国内市場には多くの競合が存在しました。例えばEPDMではJSR、三井化学、住友化学、出光DSMの4社が生産していましたが、過当競争による採算悪化を経て、現在では2社にまで集約されています。SBRも汎用グレード単体では利益が出にくい構造となっています。

 こうした事態は日本に限らず、米国や欧州でも同様です(過剰生産体制のまま安値で輸出を続ける中国のみが例外と言えます)。

今後の見通し

 この10年間でゴム原材料コストは1.5倍以上に膨らみました。中国製を除けば、ゴム・タイヤ製品全体の生産コストは1.5〜2倍に達しており、ゴム・タイヤ製品価格への転嫁・値上げは必然と言えます。

 今後もさらにコストが上がり続けるのか、あるいは現在の水準で一旦落ち着くのかは不透明ですが、引き続き注視が必要です。