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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、原油高で安値修正の動き

連載 2021-10-04

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、RSSが1キロ=210円水準まで切り返す展開になった。中国経済の減速懸念を背景に9月21日安値は193.70円に達していたが、その後はリスク投資の地合改善、原油相場の急伸を受けて、期先限月を中心に安値修正の動きが優勢になっている。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万3,000元台前半での保ち合い相場を経て、1万3,000元台後半まで切り返している。中国不動産大手・中国恒大集団の経営不安から急落する前の相場水準を回復している。

 原油相場が騰勢を強めていることがゴム相場も支援している。NY原油先物相場は終値ベースでパンデミック後の最高値を更新している。需要の急激な回復が進む一方、供給対応が間に合うのか不確実性が高まっており、冬の需要期に供給量が不足するリスクが警戒されている。天然ガス相場も高騰しており、エネルギー価格高がゴム相場に対しても安値修正を促した。

 一方で、中国経済の減速懸念は一段と強くなっている。脱炭素の目標達成のために石炭の火力発電を抑制した結果、電力供給不足が深刻化している。工場の稼働停止といった動きも報告されており、今年の中国経済成長率引き下げは不可避と見られている。非鉄金属相場などの急落は確認できていないが、需要不安の上値圧迫は続くだろう。

 実際にJPXゴム先物市場でも、原油高連動で買われたのは期先限月が中心であり、当限の値動きは鈍い。当限と6番限の順サヤ(期近安・期先高)は15円を超えており、期先限月の割高感は強くなっている。「需要環境の先行き不透明感に上値を抑えられた期近限月」と「原油高に下値を支えられた期先限月」と、限月間で地合の格差が目立つ状況になっている。

 供給サイドは安定している。新型コロナウイルスの感染被害が全般的に収束傾向にあり、各国のゴム農園や加工工場などの操業環境も正常化に向かっている。コンテナ不足やコンテナ料金価格の高騰によってゴムに限らず幅広いモノのサプライチェーンに混乱が生じているが、現段階ではゴム相場に対して直接的な影響は確認できていない。現物相場も、上値が重い中で安値修正の動きを見せた消費地相場から若干のサポートを受ける展開に留まっている。

 台風シーズンを迎えていることで、局地的に降水量が急増している。しかし、東南アジアは全般的に乾燥気味だったことで、ゴムを含む農産物生産の視点では土壌水分環境の改善を促す動きとして、歓迎されている。天候面でのリスクプレミアム加算の動きは確認できない。

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