連載コラム「白耳義通信」⑬
「海外旅行を楽しむ為に」
連載 2017-10-12
鍵盤楽器奏者 末次 克史
日本は安全だと言われているが、「本当にそうなのかどうか」は置いておくとして、先日、やはり海外では「人が多く集まる場所に於いて注意するに越したことはない」という状況に出くわしたので記しておきたい。
その前に… この夏から何度かベルギーの日本領事館へ行く機会があった。驚くことに行く度に「パスポート紛失届け」の為、日本から仕事で来られている方、観光客の方を見かけたことだ。空港や駅、それから街中には目立つところにライフルを持った兵士がいるにも関わらず小犯罪が起きているようだ。スリのプロであれば、厳戒態勢を掻い潜ることは簡単なことなのだろう。若しかして日本人の注意が足りないと言えるかも知れない。
前置きが長くなったが、先日自分が遭遇したことをお話ししたい。ブリュッセルの駅にあるハンバーガショップで食べていた時のこと。二人組みの男が自分の座っているテーブルの隣にやって来た。何だか目つきが怪しい。男が目で追っているのは自分がテーブルの上に置いている iPhone と、長椅子の上に置いていたビジネスバッグ。
注文はカウンターでするのに手には何も持っていない。話している言葉を聞いていると、ベルギーの公用語では無いようだ。しきりにこちらの様子を伺っている。用心の為、iPhone をバッグに入れ、バッグを足元に置いたら去って行った。もちろん、自分の思い過ごしということもあるだろうし、無闇矢鱈に疑ってはいけないのだけれど、こういう時は「何となく嫌な予感がする」という直感を信じるようにしている。
ベルギーへ来てこれまで、深夜余り車の通らない道を一人で歩いていて襲われそうになったり(この時は月明かりに照らされた影によって救われた)、トラム(市内電車)の中で電車が揺れた瞬間後ろから抱きつかれ上着の内ポケットに手を入れられたり(この時はポケットに何も入れていなかった)、駅のホームでいつの間にか背中にキャラメル状のものを掛けられていて二人組の男が声を掛けてきたり(この時は左右に囲まれたので急いで逃げたので助かった)と、注意していても一瞬のスキを狙われることもある。
最後は命優先であるけれど、エスカレーターに乗る時は少し斜めを向いて後ろの動向を気にするなど、人混みでは常に周りへ注意を払いたいものだ。命の次に大事なパスポートは首下げタイプのケースに入れて、服の下に隠すことをお薦めしたい。老婆心ながら。
【プロフィール】
末次 克史(すえつぐ かつふみ)
山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。
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