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連載コラム「白耳義通信」62

「閉塞感」

連載 2021-11-24

鍵盤楽器奏者 末次 克史

 隣国オランダを始め、ドイツ、オーストリアなどで、新型コロナウイルスの感染が再び拡大しているヨーロッパですが、残念ながらベルギーも感染が広がっているようです。

 先週行われた協調委員会により首相府から発表された内容によると、感染者数はこの2週間で2倍となり、新たな感染者数が4万人(11月22日現在)にまで膨れ上がっています。19日、オランダのロッテルダムで、コロナ政策に反発する一部の市民がバイクに火をつけるなど、暴動に発展したばかりですが、ベルギーの首都ブリュッセルでも21日、「10歳以上の人に対する屋内でのマスク着用」「週4日の在宅勤務の義務化」など、政府の新たな感染対策に抗議デモが行われ、約3万5千人が参加。一部が発煙筒を投げるなど警官隊と衝突。40人余りが拘束される事態となりました。

 ベルギー国民は、「中国のように、全てをシャットダウンし、全ての国民にワクチン接種を義務付け、マスク着用をするべきだ」と考える人と、「ワクチンを接種をするかどうか、マスクを着用するかどうかは、個人の自由である」と考える人に、二極分化しているように見えます。

 新型コロナウイルスに感染しないよう、万全の体制をとって生活している人にとっては、自由に行動している人が理解できず、「こういう人間がいるから、いつまでたってもコロナは収束しない。政府の対策は生ぬるい」と考えるし、個人の生き方を重視する人にとっては、「どんな政策をとってもコロナは増え続けている。ならば個々で考え生きていくしかない」と考えるし、何れにせよ、今のこの状況を招いたのは、政府のせいだと、矛先は政府の失策に向けられているようです。

 新型コロナの感染が騒がれ始め、約2年。一向に収まらない状況に国民は疲れ果ててており、その結果溜まりに溜まったストレスが、暴動へと発展しているのでしょう。知人が、先日、厚生大臣にメールをだしたと話してくれました。「政府の言う通り、対策をしているのに収まらないのは何故なのか教えて欲しい」と。(本人が書いたかどうか分かりませんが)直々に返事が送られてきたようですが、書かれている内容は、先日発表された内容と同じだったようです。

 外出もままならない、旅行もできない、ベルギー国民は限界に達しています。それを考えると、暴動は起こらない(というより諦めている?)日本のコロナ対策は、成功していると言えるのかも知れません。

【プロフィール】
 末次 克史(すえつぐ かつふみ)

 山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。

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