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連載コラム「白耳義通信」⑪

「日本の良さ」

連載 2017-08-22

鍵盤楽器奏者 末次 克史
 実はお盆前まで一時帰国していて、日本の夏の暑さを充分過ぎるくらい体感してきたところだ。ベルギーへ戻ってみるともう秋かと感じるくらい、気温もそれから人々が着ているものも夏を感じさせない。日本では太陽に余り恵まれなかったものの気温と湿度が高く、例え30℃を超えてもカラッとしているヨーロッパとは随分違うものだと思う。

 その日本滞在中、ある方から「海外からみた日本の良さは何?」と聞かれた。しかし直ぐ答えることができず「田舎になら残っているように思いますが…」と、はぐらかしてしまった。「おもてなし」の素晴らしさは良く言われるけれど、ベルギーに住んでいると過剰のようにも感じるし、実は今でも「これです!」と答えることができない自分がいる。

 話は変わるけれど、ベルギーへ戻ってきて暫くの間お腹の調子が悪かった。薬を飲んでもユルユルのままで、どうしたものかと思案していた。考えられるのは朝から冷たいものを食べていること。ベルギーでは「トーストしないパンにハムやチーズかジャムとコーヒー」というスタイルが多いけれど、ムスリ(グラノーラ)に牛乳を取っていたのだ。試しにトーストしたパンに温かい飲み物へ変えたところお腹の不調もすっかり収まった。

 ベルギー人に言わせると「温かいものは一日一回だけ」という決まりがあるらしく、朝は前述のように冷たいパン。昼もサンドイッチ(日本の三角サンドではなく、フランスパンに好きなものを挟む)で済ませる人が多く、ようやく夜に温かいものを食べる人が多い。レストランのメニューも前菜、メインと「冷たいもの」「温かいもの」にカテゴリー分けされているくらいだ。

 日本では朝から温かいご飯に味噌汁(最近は変わってきているのかも知れないが…)、それに焼き魚など。昼を外で食べたとしても温かい丼物や麺類がある。そして夜も温かいものと三食温かいもので占められることも珍しくない。

 こうしてみると温かいものは身体に良いように感じる。食べることが体を作り、そして思考に繋がる。日本の良さは「食事のスタイル」にあるのではないだろうか。

【プロフィール】
 末次 克史(すえつぐ かつふみ)

 山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。

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