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連載コラム「ゴム業界の常識・非常識」⑥

天然ゴムの原材料はどのゴム農園でつくっているかわからない?

連載 2017-08-07

加藤事務所代表取締役社長 加藤進一

 例外もあります。ベトナムの国営天然ゴム会社VRGは自社で農園を持っており、自社社員によってゴムの木からラテックスをとり、それから自社工場で天然ゴムに仕上げますのですべて天然ゴム農園、地区までトレースできます。これが特長です。最近品質管理がより高度になりすべての原材料の品質トレースが取れる必要がありますが、このベトナムVRG製天然ゴムはこの点で解決策となります。(すみません。加藤事務所はこのVRGの天然ゴムの日本、日系への販売をVRGJAPANで経由して行っているので、ここでPRしていますが。加藤がこのVRGJAPANの社長です。)一部のタイヤ会社が自社農園、自社天然ゴム工場をインドネシア、タイにもっているのも、このトレースアビリティーがひとつに理由です。

 最近世界第二位のタイヤメーカーのミシュランが面白いことを始めました。ミシュランは、「持続可能な天然ゴム」だけを使うと宣言しており、その持続可能な天然ゴムとは、5のテーマがあり、人の尊重、環境の保護、農業技術の改善、天然資源の慎重な利用、健全なガバナンスの実践をしているゴム農園、天然ゴム工場でつくった天然ゴムのことです。つまり、劣悪な労働環境、労働者から不当に搾取している、森林破壊をしている、汚い排水を垂れ流ししている、健全なガバナンスができていない農園、会社、工場からは天然ゴムを買わないということです。

 ではどうやってそのような悪い会社を見つけて、そこから買わないようにするのでしょうか? 先ほど説明したとおり、天然ゴムの生産工場はわかっても、その原料の実際のゴム農園はどの会社なのかわからないのです。そこでミシュランはスマホのアプリを作りました。農民、仲買人のもっているスマホ、タブレットにそのアプリをインストールしてもらい、農民、仲買人に、アンケート、アセスメントに答えてもらうのです。そして地域別にその結果をスコアー化します。つまり非道な買い方をする仲買人、排水規制を守らない工場、労賃を搾取する悪徳ゴム農園を、無記名で、会社名を言わずに、内部告発してくださいということです。さらにこのアプリはGPSに連動して、その場所がどの場所から告発したか場所が特定できるようになっています。するとミシュランは例えばインドネシアのスマトラの、この地区では、悪い会社が多い。よってこの地区から天然ゴムを買うのは控えようということなり、悪い会社、持続可能な天然ゴムを供給できない会社を排除しようということになります。スマホ、GPSを使うところがミソです。フランス人は実にユニークなことを考え出します。

 今後は価格、品質管理だけでなく、CSR、サステナビリティという観点からもゴム原材料が選別されていくことになるでしょう。

 下の資料はミシュランのRUBBERWAY 天然ゴムサプライチェーンマネジメント。

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