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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、急騰一服後のボックス相場

連載 2023-11-06

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=250円台をコアにほぼ横ばいの展開になった。産地主導の急伸地合は一服し調整局面入りしている。ただし、為替が円安に振れた影響もあり、250円台前半では押し目買いを入れる動きも強く、ボックス相場に移行している。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万4,000元台前半まで値下り。1万4,000元台中盤で揉み合う展開が続いていたが、10月11日以来の安値を更新している。こちらもボックス相場の中での値動きだが、中国製造業指標の悪化などが嫌気された模様だ。

 10月19日に一時276.90円まで急伸した後は、持ち高調整が中心の展開が続いている。産地相場の高騰が一服し、JPXゴム相場は取組高の急減傾向に歯止めが掛かる一方、出来高が抑制されるなど、マーケット環境の鎮静化を打診するフェーズになっている。サヤをみても、当限に若干のプレミアムが残されているが、2番限以降は順サヤ(期近安・期先高)環境に移行しており、こうした点からも産地主導の高騰相場は一服したことが確認できる。

 タイ中央ゴム市場(ソンクラ)のRSS現物相場も、10月27日の1キロ=57.00バーツが、11月1日時点では54.88バーツまで値下がりしている。産地では依然として豪雨や強風が報告されており、気象環境が安定しているとは言い難い。ただし、大規模な洪水被害の報告が減っていることもあり、産地相場を押し上げるような動きは一服している。例年、降水量が落ち着き始める時期を迎える中、天候リスクの緩和・解消が注目される地合になっている。

 日本の営業倉庫は6月に入ってからほぼ一貫して取り崩しが続いており、在庫タイト感が強い状況には変化がみられない。このため供給ショックに対しては脆弱な地合が続くものの、産地相場の上昇には息切れ感が目立つ。

 一方、需要サイドでは米中製造業指標の悪化がネガティブ材料視されている。10月中国製造業PMIは、前月の50.2から49.5まで低下している。また、10月米ISM製造業指数は同49.0から46.7まで低下している。米自動車工場でストライキが発生した特殊要因の影響もあるが、製造業の活動鈍化が示されたことが、特に上海ゴム相場の上値を圧迫している。

 中東情勢は緊迫化しているが、ゴム相場に対する影響は限定的。原油相場の急騰はみられない一方、世界経済の減速懸念が強くなっていることはネガティブだが、注目度は低い。一方、10月31日の日本銀行金融政策決定会合後に大きく円安に振れたことは、円建てゴム相場の下値を支えた。さらに円安が進むと、底固さが強化されよう。

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