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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、中国経済不安も横ばい続く

連載 2023-06-05

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=210円水準でやや上値の重い展開になった。中国経済の減速懸念の強さが上値を圧迫し、210円台前半では戻り売り優勢の地合が続いた。一方で、改めて本格的に売り込むような動きまでは見られず、最近のボックス相場が踏襲されている。出来高も抑制されており、持高調整が中心の展開が続いている。週前半は急激な円安のサポートも見られたが、週後半にかけては円安が一服したことも上値圧迫要因になった。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万1,000元台後半で揉み合う展開になった。週を通じて売買が交錯し、明確な方向性を打ち出せなかった。

 中国の5月製造業PMIは、前月の49.2から48.8まで低下した。4月に続いて5月も中国製造業の活動は抑制されていたことが確認されている。活動の拡大・縮小の分岐点となる50ポイント割れも続いており、中国経済に対する信頼感が低下していることはネガティブ。しかし、同統計を手掛かりに上海ゴム相場を売り込んでいくような動きは見られず、逆にゴム相場の動意の乏しさが再確認されるだけの結果に終わった。

 中国経済に関しては、引き続き米中経済対立に対する警戒感も強い。半導体分野を中心に対立が激化しており、中国経済の回復にブレーキを掛ける要因と評価されている。中国筋からのゴム買い付け意欲の鈍さも指摘されている。

 しかし、トヨタ自動車が4月のグループ世界生産高が前年同月比8.3%増に達したことを報告するなど、世界的に自動車生産の回復が進んでいることで新車用タイヤ需要は堅調との評価も根強く、ゴム相場は上値を抑えられながら下げ渋る中途半端な地合が続いている。強弱評価を下せない状態が続いている。

 東南アジアが減産期から生産期への移行を進めていることはネガティブ。タイ中央ゴム市場の集荷量も5月下旬に一段と増加している。一方で、モンスーンによる洪水リスク、異常気象「エルニーニョ現象」による高温・乾燥リスクに対する警戒感も強く、産地相場もほぼ横ばい状態が続いている。6月1日時点のRSS現物相場は、前週比0.4%高の1キロ=50.21バーツとなっている。

 在庫環境についても、上海ゴム市場では取引所在庫の減少傾向が好感される一方、国内市場では営業倉庫の増加傾向が嫌気されているが、こちらも決定打を欠いた。

 円、原油、日経平均株価などは乱高下する不安定な地合になったが、ゴム相場に関しては週を通じて横ばいの展開が続いた。最近のボックス相場が踏襲されるだけの展開が続いている。

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