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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、上海ゴム主導で反落

連載 2023-03-13

マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=220円水準まで下落する展開になった。中国経済の成長加速期待を背景に3月3日には231.60円まで値上がりしていたが、そこから一転して軟調地合になり、2月20日以来の安値を更新している。中国政府の2023年経済成長目標が慎重だったこと、米国で利上げ強化の議論が活発化していることが嫌気されている。為替は円安気味に推移しているが、戻り売り優勢の展開になった。

 上海ゴム先物相場は1トン=1万2,000元台中盤で揉み合う展開になっていたが、1万2,000元台前半まで値位置を切り下げている。ボックス相場を割り込んだ後の投げ売りが膨らんでおり、2022年11月4日以来の安値を更新している。

 3月5日に開幕した中国全国人民代表大会(全人代)では、2023年の経済成長率目標を「5%前後」として、2022年の「5.5%前後」から引き下げた。ゼロコロナ政策の終了で2022年並みの成長目標になるとの見方もあったが、慎重な目標設定がゴム市場では嫌気された。経済の正常化に向けて財政支出を拡大する方針なども打ち出されているが、中国経済に対する楽観ムードにブレーキが掛かったことが、ゴム相場の上値を圧迫している。

 また、米国ではパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が3月7日の議会証言で、インフレ抑制のために従来想定されていたよりも強力な利上げ対応を行う可能性を示唆した。これによって米経済の減速懸念が強くなったことも、ゴム相場の上値を圧迫している。

 3月入りしてから原油などコモディティ市場全体が中国経済成長期待で地合を引き締めていたが、それが一転して上値の重い展開に転じており、こうした流れの中でゴム相場も上値を圧迫された。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は、3月9日時点でUSSが前週比1.8%安の1キロ=49.16バーツ、RSSが同1.3%安の52.16バーツとなっている。ウインタリング(落葉期)や東南アジア全域の豪雨傾向などが集荷量を抑制しているが、産地主導の値上がりは拒否されている。2月下旬から3月初めてにかけては産地相場も底固さが目立っていたが、消費地相場が軟化すると一転して下落している。

 JPXゴム相場は、期先限月が乱高下しているが、当限は一貫して210円前後の値位置で横ばい気味に推移している。国内在庫の増加傾向もあり、円安環境ながら大きく値位置を切り上げることができていない。3月9日時点では3月限の207.90円に対して8月限は221.60円であり、13.70円の順サヤ(期近安・期先高)環境になっている。大幅な順サヤ是正には慎重ムードが目立っている。

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