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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、膠着気味の展開に移行

連載 2023-02-13

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=220円台中盤から後半の狭いレンジで揉み合う展開になった。上海ゴム相場、産地相場がともに膠着化したことで、積極的な売買が見送られている。1月27日に昨年10月11日以来の高値となる238.30円まで値上がりしていたが、2月2日には224.40円まで反落した。ただ、220円台中盤からさらに売り込むような動きはみられず、薄商いの膠着相場に移行した。

 上海ゴム先物相場は、春節の連休明け直後の1月30日に1トン=1万3,690元まで値上がりしていたが、2月6日には1万2,585元まで下落した。ただ、1万2,000元中盤では下げ一服となり、明確な方向性を打ち出せていない。これと同様の傾向は原油や非鉄金属相場でもみられる。中国がゼロコロナ政策を終了したことで、同国の経済成長加速に対する期待感は強い。しかし、実際に急激な成長トレンドに回帰するのかについては懐疑的な見方も強く、様子を見たいとのニーズから売買が交錯気味の状態が続いている。

 また、世界経済の減速懸念が上値圧迫要因になっている。2月に入ってから欧米を中心に世界各国の中央銀行がインフレ抑制のための追加利上げに踏み切っている。強力な利上げ対応が続いていることが、世界経済の減速を促すのではないかとの警戒感がある。ただ、世界的に株価が安定を見せていることもあり、ゴム相場のみをさらに大きく売り込むような必要性は高まらなかった。

 産地相場も膠着感を強めている。タイ中央ゴム市場の現物相場は、2月9日時点でUSSが前週比1.1%高の1キロ=47.76バーツ、RSSが同1.1%高の49.73バーツとなっている。中国の春節中にRSSは一時53.53バーツまで値上がりしていたが、春節終了後は急反落し、49バーツ台での小動きになっている。

 急ピッチな値上がりを受けて、50バーツ台では集荷量が急増しており、農家が手元在庫の売却を急いだことが窺える。しかし、50バーツを割り込むと逆に集荷量は抑制されており、さらに大きく値を崩すような必要性は認められなかった。49バーツ台は農家にとって割高でも割安でもない価格水準と評価されている。2月も中旬に差し掛かる中、タイなどではウインタリング(落葉期)が始まっている。今後は徐々に減産期本番を迎えることになるが、まだ供給サイドのリスクを積極的に織り込んでいくような動きは見られない。

 JPXゴム相場は期先と同様に当限も膠着気味の展開になり、当限と6番限のサヤは10円超の順サヤ(期近安・期先高)で安定している。サヤ環境にも目立った変化は見られず。

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