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連載コラム「白耳義通信」⑥

「ベルギー流 食器の洗い方」

連載 2017-03-15

鍵盤楽器奏者 末次克史

 ただいま我が家は水回りに問題が発生し工事中の為、キッチンで洗い物が出来ないなど、いくばくか不自由な生活を強いられている。食洗機でもあれば良いのだが、そんな便利なものもなく、バスルームで食器を洗っている始末。

 最近は一人暮らしでも食洗機は便利ということで、「持っているよ」という声も聞くようになったけれど、一昔前は大抵手洗いであった。ベルギー人の家のキッチンには大抵二つのシンクがある。一つはお湯を張って洗剤を入れ食器を洗う為。もう一つは熱いお湯を張って、食器を濯ぐ兼熱湯消毒をするもの。シンクが一つしかなければ桶を用意する。

 日本の多くの家庭のように水を流しながら洗うということはまず無い。水に対してはシビアだ。暖房代より水道代の方が高いということもあるだろうし、水道水は普通飲まないので、水は買うものという意識も働いているせいも有るかも知れない。一番はそのように躾けられたというのが大きいだろう。

 さて食器の洗い方は特別ベルギー風というものがあるわけでないので至って普通だが、もう一つの仕上げ用のシンクの使い方を初めて見た時、ちょっとビックリした。それはコップや皿を洗い終え、サッと一回お湯に通して終わりなのだ。「たった一回漬けるだけでは、洗剤が落ちて無いのでは?」という疑問が湧く。それでも余り気にならないらしい。食器乾燥機だけ持っていることは殆どないので、布巾で拭いてお終いである。

 もし実演を見たいならベルギーのカフェに行けば目にすることができる。カウンター席に座れば完璧だ。店の人が、飲み終えられたビールグラスをシンクの中に立てられた縦長のタワシに入れて上下すること数回。その後、隣の水を張ったシンクに入れたと思ったら直ぐ出す様は芸術的ですらある。見ていて飽きない。

 ベルギーへお越しの際は、是非カフェで美味しいビールを飲みながら、チラッとカウンターの中の様子も覗いて見て頂きたい。

【プロフィール】
 末次 克史(すえつぐ かつふみ)

 山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。

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