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【マーケットアナリティクス】

天然ゴム相場の3月前半のレビューと3月後半のアウトルック

連載 2017-03-15



マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努

3月前半のレビュー

 3月上旬のTOCOM天然ゴム先物相場(期先)は続落する展開になった。2月28日の1㎏=262.00円をボトムに3月6日の280.50円まで切り返し、2月以降の急落地合に終止符が打たれる兆候も見受けられた。しかし、上海ゴム相場が底入れ確認に失敗する中、東京ゴム相場も改めて下値を切り下げ、3月中旬には260円水準まで更に値位置を切り下げる展開になっている。これは今年の最安値更新になる。

 引き続き上海ゴム相場の動向に支配されているが、その上海ゴム相場がどのようなロジックによって急落したのか把握することが難しい状況にある。為替市場では人民元相場が軟化しており、通常であれば人民元建ての上海ゴム相場は上昇するのが当然の状況とも言えた。しかし実際には人民元安に逆行する形で上海ゴム相場は下落しており、改めて投機マネーを引き寄せることに失敗している。鉄鉱石や石炭相場なども乱高下が繰り返されており、瞬間的に強弱感が入れ替わる極めて投機色の強い相場環境になっている。

 昨年後半は、人民元安への対応として中国の投資家がコモディティと仮想通貨ビットコインを積極的に購入していたが、2月以降は専らビットコインに投資人気が集中しており、上海ゴム市場からは投機マネーの流出傾向が目立つ状況にある。

 生産地では乾季入りが近づいているが、タイ中央ゴム市場における集荷量などに目立った変化はみられない。現物相場は専ら上海ゴム相場の値動きを追い掛ける展開になっており、産地需給環境は特に材料視されていない。一方、中国では2月の新車販売台数が前年同月比22.4%増の193万9,200台となったが、これは昨年2月の販売が不調だった結果であり、前月比では23.0%減少になっている。小型車減税の減税率縮小を受けて、やや販売環境は悪化傾向にある。

 3月7日にはタイ政府が政府在庫12万トンの入札を予定していたが、ゴム相場の急落を受けて入札が取り止めになっている。次回の入札スケジュールなどは決まっていない。

3月後半のアウトルック

 3月下旬のゴム相場は、引き続き投機色の強い上海ゴム相場の動向に左右されることになる。通常の相場分析の視点からは、米国の利上げサイクルが加速する中、人民元相場の下落が上海ゴム相場のリバウンドを促すことが予測される。しかし、実際の上海ゴム相場は突然に意味なく急落するような動きを見せており、何に注目して売買が行われるのかを把握することさえ難しい状況になっている。このような不安定な相場環境を嫌って、東京ゴム市場では投資家が売買を見送る傾向が強くなっており、薄商いの中で瞬間的な急伸・急落といったボラタイルな展開となるリスクを想定しておく必要がある。

 人民元安環境が続く中、いつ上海ゴム市場に投機マネーが流入を再開しても不思議ではないが、足元ではなおビットコインの方が投資人気を集めている。中国当局がビットコイン投資規制といった動きを見せるまでは、「天然ゴム売り→ビットコイン買い」といった資金シフトの動きが継続する可能性も想定しておく必要がある。天然ゴム需給ではなく、専ら中国の投資環境に依存する完全な投機相場と化しているだけに、中国の投資家層がどこに資金シフトを進めることに魅力を感じているのかを探ることのみが重要な相場環境になっている。足元では、天然ゴム市場からの資金流出傾向の方が目立つが、断続的に人民元相場の値下がり傾向が続く中、下げ過ぎ感も強い。

 一方、3月下旬には生産地で減産圧力が顕在化する可能性が高く、産地主導の値上がり圧力がみられるかも焦点になる。昨年も3~4月にかけては産地の干ばつ傾向を背景に値上がりした経験があるだけに、季節要因を映した上昇圧力がみられるか否かにも注目したい。ただ、最近の傾向としてはこうした需給環境は余り材料視されない可能性が高い。なお、気象庁のエルニーニョ監視速報では、春から夏にかけてエルニーニョ現象が発生する確率は40%との予測が発表されている。異常気象発生のリスクは限定されている。

 中国人投資家の売買動向だけで決まる不安定な相場環境が続くことになる。人民元安を素直に好感してビットコイン同様に上海ゴム市場に対しても資金流入が再開されれば、東京ゴム相場は300円の節目近辺までリバウンドする程度の余力は残している。一方、3月上旬と同様にビットコインとの競合に敗れる状態が続くと、250円の節目割れから更に値下がり傾向が続く可能性もある。やや下げ過ぎが意識される価格水準だが、天然ゴム需給が殆ど関係ない相場のため、上海ゴム市場に対する投機マネー流入が確認されるまでは、底打ち確認には慎重スタンスが求められる。

【レンジ】
3月前半の取引レンジ 255.40~280.50円
3月後半の予想レンジ 230.00~290.00円

【プロフィール】
小菅 努(こすげ つとむ) マーケットエッジ株式会社 代表取締役

 1976年千葉県生まれ。筑波大学卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。コモディティ市場や金融市場の調査・研究・分析業務に従事。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)

http://www.marketedge.co.jp/
https://twitter.com/kosuge_tsutomu

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