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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、株・原油・産地高で小幅高

連載 2022-10-10

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=230円水準まで小幅値上がりする展開になった。中国が国慶節の連休入りしたことで薄商いの持高調整が中心の展開になったが、株高や原油高といった外部環境からの支援に加えて、産地相場が天候不順で強含んだことが好感され、小幅上昇している。

 上海ゴム先物市場は、10月1~7日まで国慶節の連休で取引が行われていない。急激な人民元安が一服していることで、通貨安を背景とした上昇圧力にはブレーキが掛かることになる。一方、10月16日から中国共産党大会が開幕し、習近平国家主席への権力集中の度合い、経済対策、新型コロナウイルス対策、環境対策などでどのような動きがみられるかが注目される。ただJPXゴム先物市場では、上海ゴム市場の休場中に思惑的な売買を仕掛けるような動きはみられず、週を通じて薄商いの持高調整に終始している。

 全般的に売買材料が乏しい中、株高や原油高環境がゴム相場にもマイルドなサポートを提供した。9月下旬は米金利急伸によって投資家のリスク選好性が後退し、さらに世界経済減速に対する警戒感も強くなっていた。しかし、10月入りしてからは米長期金利の上昇が一服し、株式を中心に資産価格全体が安値から切り返したことが、ゴム相場もサポートした。

 また、10月5日に石油輸出国機構(OPEC)プラス会合が開催されたが、日量200万バレルと世界石油需要の2%に相当する大規模な減産が決定され、原油相場が騰勢を強めたこともポジティブ。最近は株価や原油相場との間に目立った連動性は認められなかったが、上海ゴム休場で手掛かりに乏しい中、久しぶりに株価や原油相場の動向も重視された。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は、10月6日時点でUSSが前週比4.2%高の1キロ=48.57バーツ、RSSが同4.2%高の50.63バーツ。タイでは豪雨や洪水被害が報告されており、それと連動する形で産地相場も久し振りに大きく上昇している。

 現段階で被災しているのはタイ北部が中心であり、主に南部に集中するゴムの生産や流通に深刻な障害が発生している訳ではない。実際に中央ゴム市場の集荷量にも大きな変動は確認できない。ただ、このまま豪雨傾向が続くとゴムの生産、集荷環境に影響が生じる可能性もあり、産地相場にはリスクプレミアムが加算されている。

 もっとも、JPXゴム相場では産地高を手掛かりに逆サヤ(期近高・期先安)を形成するような動きはみられず、逆に順サヤ環境になっている。期近限月に対するプレミアム加算の必要性は認められなかった。

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