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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、急落一服で修正高が進む

連載 2022-09-19

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=220円台中盤まで切り返す展開になった。中国経済の減速懸念を背景に9月7日安値は214.10円に達していたが、安値修正の動きが優勢になっている。①中国政府の景気刺激策への期待感②中国自動車市場の改善傾向③産地天候リスクの高まり④売られ過ぎ感の強さなどが、急落一服後の反発を促している。約3週間ぶりの高値を更新した。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元台前半での保ち合いを経て、一時1万3,000元の節目を回復する急反発になった。

 中国の李克強首相は9月12日、消費回復および投資促進に焦点を当てた段階的な経済安定化策を導入し続け、可能な限り早期に実行に移す方針を示した。具体性のない発言とあって中国株式市場ではあまり材料視されなかったが、中国コモディティ市場では安値修正を進めるきっかけとしてポジティブ材料視された。ゴム以外に鉄鉱石や石炭、非鉄金属相場なども下値をサポートされており、上海ゴム相場もその流れの中で修正高になった。

 また、9月8日に発表された8月の中国新車販売台数が前年同月比32.1%増の238万台と急増したこともポジティブ。これで3カ月連続のプラスになる。中国政府は6月以降、乗用車の購入奨励策を相次いで打ち出しており、景気減速圧力が強まる中でも自動車市場は一定の底固さを示している。これに関連してプラチナやパラジウム相場も底固さを見せており、自動車市場に対する評価・見通しの改善もゴム相場の反発を促している模様だ。ただ、中国ではゼロコロナ政策に基づくロックダウン(都市封鎖)が続いており、政策支援で自動車市場を刺激し続けることには限界があるとの慎重な見方も強い。

 一方、タイ中央ゴム市場の現物相場は、9月15日時点でUSSが前週比0.3%高の1キロ=46.04バーツ、RSSが同2.6%高の48.49バーツと、横ばいから小幅高になっている。大きな値動きではないが、消費地相場の反発を受けて、産地相場も下げ一服となった。

 モンスーン・シーズンを迎え、東南アジアでは降水量が増えている。今季は異常気象「ラニーニャ現象」の発生もあり、局地的な洪水被害も多数報告されている。こうした状況もゴム相場反発の一因として指摘されている。ただ、現時点では集荷量が大きく落ち込むような動きまでは確認できていない。さらに大規模な供給障害が発生するのか、注意が必要な時間になる。なお日本の気象庁は9月9日、「今後、冬にかけてラニーニャ現象が続く可能性が高い(70%)」との報告を行った。

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