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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、期近主導の堅調地合に

連載 2022-07-04

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=250円台中盤から後半まで小幅値位置を切り上げる展開になった。上海ゴム相場の下げ一服感、円安傾向、国内需給のタイト感を背景に、期近限月主導で底固く推移した。大きな値動きには発展しなかったが、6月29日高値は261.00円に達している。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元台後半でやや底固く推移した。中国国内で新型コロナウイルス感染被害に一服感が強くなっていること、世界的なリセッション(景気後退)への警戒感を背景とした原油や非鉄金属の急落が一服していることなどが下値を支えている。ただ、こちらも大きな値動きには発展しなかった。

 6月22日にJPXゴム先物の6月限が納会を迎えたが、受渡価格は270.00円となり、5月限の250.70円を19.30円上回った。これは2021年1月限以来の高値になる。受渡高も5月限の259枚から320枚まで大きく増加しており、納会での受け腰の強さが目立った。国内では入庫量の抑制で在庫の取り崩しが進んでおり、こうした中で期近限月に対して買い圧力の強さが目立ち始めていることはポジティブ。上海ゴムや産地相場の動向と関係なく、JPXゴム相場は期近限月主導の上昇圧力がみられた。

 中国では6月25日、上海市当局が新型コロナに対する「勝利」を宣言している。ロックダウン(都市封鎖)を含む「ゼロ・コロナ」政策が成功したことで、今後は各種行動規制の緩和・撤廃が進む見通しであり、中国経済に対する信頼感が高まっていることはポジティブ。

 一方、世界各国の中央銀行がインフレ対応で強力な利上げ政策を展開する中、実体経済が成長を維持できなくなるリスクが警戒されている。しかし、パニック的な急落地合を形成していた原油相場がV字型の切り返しを見せるなど、資源価格は全般的に落ち着きを取り戻しつつあり、ゴム相場も底固さをみせている。

 産地では雨がちの気象環境が続いているが、大規模な洪水被害などの報告は行われていない。適度な土壌水分が確保されていることが、農産物全体の生産環境にポジティブと評価されている。タイ中央ゴム市場の集荷量は、低迷状態が続いていたUSSが増加傾向にある一方、RSSが高止まりしている。6月30日時点の現物相場は、USSが前週比3.3%安の1キロ=60.45バーツ、RSSが同2.3%安の62.08バーツとなっている。

 消費地相場のじり高傾向に対して、産地相場のじり安傾向と、消費地と産地で価格トレンドが逆行する珍しい相場環境になっている。

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