連載コラム「ゴム業界の常識・非常識」(32)
ゴムはリサイクル、再生できる?できない? サステナブルな世界に
連載 2022-02-07
加藤事務所代表取締役社長 加藤進一
ゴムは一般的にはリサイクルできないと言われています。樹脂と違って、成形時に加硫(架橋反応)するので、化学的にいうと、原料(ポリマー、カーボンブラック、加硫剤)が反応して別の化学物質にかわってしまっているのです。よってこの反応をもとに戻さないと、再度ゴム原料として使えません。これではゴムのリサイクルができず、サステナブルな原料として問題があります。なんとかいい方法はないでしょうか?
再生ゴムというゴム原材料があります。これは天然ゴムが主な原料である古タイヤやブチルゴムが原料であるタイヤチューブに再生剤等を添加して、高温で、ゴムの加硫点(反応箇所)を外して、もとに戻す方法です。ただ再生されたタイヤ再生ゴムは、元の原材料に比べると、ゴム物性が低下してしまいます。同じ原料としてそのまま使うには問題があります。新品材料と混ぜて使うことはできます。またこの方法でのEPDM、NBRゴムはあまり再生利用が進んでいません。
また高速せん断方式、高温高速せん断方式で、EPDMを再生する方法があり、実用化されていますが、その再生する条件が微妙で結構難しいようです。どの合成ゴムでもリサイクルできるわけではないようです。
シリコーンゴムの一部は高温で、酸アルカリ下でゴム架橋点を化学的に分解して、シリコーンゴムの原料までいっぺんに戻す方法が、海外ではあります。日本にはその再生工場はありませんが、日本でシリコーンゴム端材を集めて、アジアの工場に送り、シリコーンゴム、シリコーンオイルの原料に戻す方法が実用化されています。
ゴムを微粉砕して、フィラーとして再度ゴムに混ぜる方法もありますが、微粉砕にすることが結構難しいようです。
最近注目されているのが、タイヤ等のゴムを高温で蒸し焼きして、タイヤをオイル、カーボンブラック、スチールに分解する方法です。酸素がない状態で、高熱で焼くと、天然ゴム、SBR、BRゴムがオイルやカーボンブラックになります。タイヤの補強材のスチールコードは鉄製ですから、鉄として残ります。できたオイルは燃料になります。カーボンブラック(もどき?)はその一部が再生カーボンブラックとして、また使用できます。グレードですとN660に近いものができます。補強性があるカーボンブラックです。日本にはこの再生カーボンブラックの工場はありませんが、ヨーロッパ、北米、アジアにすでにこの工場があります。タイヤをリサイクルして再生カーボンブラックとして再度使えれば、ゴム業界でのサステナブルな材料となります。
加藤産商(株)、(株)加藤事務所ではこれらの再生ゴムとその原料の供給、シリコーンゴム端材の再生、再生カーボンブラックのゴム業界への提供を行っています。
ゴムがサステナブルな、リサイクルできる材料になる方法を世界中で検討されているのです。
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