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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、上海高と原油高で底固い

連載 2022-01-24

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=250円の節目水準まで値上がりした。上海ゴム相場が底固く推移していること、原油相場の急伸、為替が円安気味に推移したことなどが好感され、押し目買い優勢の地合が維持されている。2021年11月26日以来の高値を更新している。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万5,000元の節目を挟んで揉み合う展開になっている。1月13日の1万5,240元をピークに調整売りが膨らむ場面も見られたが、1万4,000元台後半では押し目買いを入れる動きが強く、明確な方向性を打ち出せていない。ただ、マーケットでは押し目での物色意欲の強さが確認されていることが評価されており、JPXゴム相場も押し目では買いを入れる動きが目立った。

 中国の10~12月期国内総生産(GDP)は前年同期比4.0%増となり、1年半ぶりの低水準になっている。不動産市場の低迷や、「オミクロン株」対策のロックダウンなどの影響で、景気の鈍化傾向が目立つ。ただ、中国人民銀行(中央銀行)は1月20日に最優遇貸出金利を2カ月連続で引き下げるなど、景気下支えの姿勢を鮮明にしており、上海ゴム相場は底固さを保った。

 中国市場では、鉄鉱石や非鉄金属相場も底固さを見せており、この流れの中で上海ゴム相場も底固く推移していることが好感されている。自動車生産環境は正常化しているとは言い難く、年明け後も大手自動車メーカーの減産計画発表といった動きがみられた。ただ、「オミクロン株」の影響でサプライチェーンに大きな混乱が生じている訳ではなく、自動車生産の正常化期待は維持された。

 上海ゴム相場の底固さに関しては、ゴム需要環境というよりも中国のマクロ経済環境の評価に強く依存しているため、投機色の強さも否めない。ただ、1万5,000元の節目を上回る取引時間が着実に増えていることが、ゴム市場では好感されている。

 一方、タイ中央ゴム市場の現物相場は、1月20日時点でUSSが前週比0.1%高の1キロ=56.05バーツ、RSSが同1.5%安の59.11バーツ。消費地相場の値動きが鈍く、産地相場も明確な方向性を打ち出せていない。

 産地では特に大きな天候障害は報告されておらず、集荷量は安定している。トンガの火山噴火の影響で気象環境が不安定化するリスクも警戒されたが、現段階では特筆すべき混乱は報告されていない。

 原油相場が2014年10月以来の高値を更新していることは心理的なサポート要因になった。インフレ懸念でコモディティ価格全体が下支えされている。

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