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とある市場の天然ゴム先物 26

海外投資家から見た日本の天然ゴム先物価格

連載 2021-11-09

長期の天然ゴム先物価格と為替の関係

 さて、次に長期の天然ゴム先物価格と為替の関係を見てみましょう。

 第5回の連載記事において、1985年のプラザ合意以降、長期的な円高の進展による輸入価格の下落や天然ゴムの供給過多などにより、天然ゴム先物価格も20年にわたり長期低迷したというお話をしました。

円高進展時におけるRSS3先物価格と為替の推移

出所:日本取引所グループ、日本銀行「主要時系列統計データ表」(東京インターバンク相場、月次)より筆者作成

 まずは長期の円建てと米ドル建ての天然ゴム先物価格の推移を単純に比べてみることにします。期間は日本銀行「主要時系列統計データ表」で為替のデータが取れる1980年以降とします。

円建て、米ドル建てRSS3先物の長期値動き

出所:日本取引所グループ、日本銀行「主要時系列統計データ表」(東京インターバンク相場、月次)より筆者作成

 ここで確認できる大きな特徴としては、①1985年以降の急激な円高により円建て、米ドル建てのRSS3先物の価格差が縮まったこと、②2008年の金融危機後の先物価格の回復局面において、同時に円高が進展したことから、米ドル建ての方が大きな上昇幅になったこと、が挙げられます。

 ①の時点では天然ゴム先物の売買の中心は国内投資家であり、海外投資家にとって大きな関心はなかったでしょうから、ここでは②を少し詳しく見てみましょう。

 金融危機後にRSS3先物価格が底値を付けた2008年12月を100としたグラフが以下になります。なおRSS3先物価格は2008年12月に底値を付けて以降、中国経済の回復見込みにより相場は急激に反転し、2011年2月には史上最高値である535.7円を記録することになります。またこの間、為替も100円/米ドル台から80円/米ドル台まで円高が進展しています。

米ドル建て、円建てのRSS3先物のパフォーマンス(2008年12月31日=100)

出所:日本取引所グループ、日本銀行「主要時系列統計データ表」(東京インターバンク相場、月次)より筆者作成

 2008年12月末を100として円建て、ドル建てのRSS3先物価格を比べてみますと、特に最高値を記録したタイミングで米ドル建ての方がパフォーマンスがよかったことから、この時期は天然ゴム現物の売り手または買いポジションを事前に仕込んでいた海外投資家にとって投資妙味があったことが分かります。

 ただしその後はアベノミクスとともに円安に振れることとなり、2008年末を起点とすると、2013年以降は現在まで一貫して米ドル建てのパフォーマンスの方が劣っています。

 さて、今回は米ドル建ての天然ゴム先物の値動きを簡単に見てみました。

 もちろん海外投資家といっても、買い手や売り手、更には限月間や市場間の裁定取引をするプレイヤーやマーケットメイカーなど様々なタイプの投資家がいますし、投資期間も投資家によって異なりますので、一概に「こうした市場環境だと海外投資家にとって有利」とは言えません。

 とはいえ、米ドル建てにすることによって、通常の円建てにおける価格推移とはまた違った世界が見えてくるというのは非常に面白いところです。

※次回の更新は2021年11月23日(火)頃の予定です。

【もっと知りたい方に!】
日本銀行「主要時系列統計データ表」
日本取引所グループ「投資部門別取引状況」

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