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連載コラム「ゴム業界の常識・非常識」(30)

新型コロナの隠れた影響がまだまだ続いている

連載 2021-10-01

加藤事務所代表取締役社長 加藤進一

 新型コロナで、ゴム産業は影響を受けています。世界のゴム産業を見渡してみると、プラスの面もマイナスの面もいろいろあります。

 まずはプラスに働いた面。ゴム手袋メーカーです。2020年春以降、マレーシア、タイ、中国のゴム手袋メーカーは、大増産を続けています。生産量を3倍にしてもまだ間に合わないのです。マレーシアの世界最大手ゴム手袋メーカーのTOP GLOVE社は利益が数倍になりました。日本のNBR,CRの合成ゴムメーカーも手袋の原料になるNBRラテックス,CRラテックスの売れ行きがよいようです。またアジア各国政府が、天然ゴムの木からとれたラテックスを、天然ゴムRSS3グレードの生産に使うのではなく、手袋原料に使うため優先的に手袋メーカーに供給するように指示したため、RSS3の価格が高止まったり、ベトナム産天然ゴムのあるグレードが不足になったりしました。

 一方、マイナス面もいろいろあります。2021年夏からは、日本の自動車生産台数が制限されました。車を買いたい人の注文は減っていません。しかし東南アジア、特にベトナム、マレーシアで生産されている自動車部品、例えばワイヤーハーネス(自動車の組み電線)の生産では、新型コロナの影響でこれらの国で行動制限が定められ、完全なロックダウンになりました。そのため社員が工場に通えなくなり、工場に寝泊まりしても間に合わず、これらの部品の供給が遅れてしまい、結果日本の自動車生産が急に減産しました。その影響で自動車ゴム部品の生産量が減っています。半導体不足の影響もありますが、新型コロナの影響で部品が間に合わないという理由です。ゴム部品は生産できるのに、他の部品が間に合わず、結果自動車ゴム部品も減産になりました。

 また船の輸送もまだ遅れています。欧州航路、アジア航路は、2020年春に比べて最悪期は過ぎつつありますが、2021年9月現在北米航路まだ遅れが解消されていません。特に米国西海岸の荷役が遅れています。これは新型コロナの影響で港湾作業者の人数が減ったためです。この船の遅れは来年春まで続きます。そのため、アジアの工場から米国に持っていくゴム部品の供給が遅れ、また北米から日本に輸入される合成ゴムも納入スケジュールが遅れています。これがゴム原材料不足の要因にもなっています。

 当社の取引先で、生ビールを詰める業務用の金属製の樽の保護用ゴムリングを作っている会社がありますが、飲食店での業務用生ビールの売れ行きが激減し、このゴムリングの生産が低迷し、その材料需要が減りました。

 もちろん人々が新型コロナのことで今後の生活に対する先行きが不安になり、いろいろなものの購入意欲が減り、もう少し様子を見てからという風潮もありましたが、日本ではワクチン接種が50%を超し、今後の生活も見えてきました。しかしまだまだゴム業界では、新型コロナの影響が隠れており、思わぬところで影響が出ているようです。早く正常化することを望みます。

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