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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、中国リスクで年初来安値

連載 2021-09-27

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、RSSが1キロ=200円水準まで小幅下落する展開になった。国内は飛び石連休で営業日が少なかったが、中国で不動産大手・中国恒大集団の経営不安が一気に高まり、世界的に株安・資源安が進んだことが、ゴム相場も押し下げた。一時は193.70円まで値下がりし、改めて年初来安値を更新している。ただ、本格的なリスクオフには発展しなかったことで、週中盤以降は押し目買いが下値を支え、下げ幅を圧縮した。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万3,000元台前半まで急落する展開になった。中国不動産大手の経営不安から、中国経済や金融市場のリスクに敏感な地合になり、前週の安値修正の動きから一転して、戻りを売られている。

 中国恒大集団の経営不安は従来から指摘されており、中国株の上値を圧迫する一因になっていた。ただ、9月23日からドル建て社債のクーポン支払いが始まることで、デフォルト(債務不履行)が発生し、最悪の場合にはリーマン・ショックに匹敵する規模のショックが生じるリスクまでもが警戒されたことが、リスク資産全体を押し下げた。しかし、当面のデフォルト回避に向けての取り組みが報告されていることに加えて、中国人民銀行(中央銀行)が流動性供給を強化することで金融経済を支援する姿勢を鮮明にし、パニック的なリスクオフ化は瞬間的なものに留まっている。まだこの問題は解決されておらず、リスクオフの火種は残された状態にあるが、週中盤以降は株式や原油相場などが軒並み地合を引き締め、この流れからゴム相場も急落後の反発と不安定な値動きを見せている。

 一方で、中国経済の減速傾向にはいずれにしても変化が生じていないこと、さらには半導体や部品供給不足で自動車生産・販売環境の悪化がゴム相場の上値を圧迫し、今年最安値圏での取引が維持されている。

 東南アジアのパンデミックはまだ深刻な状態だが、多くの国でピークを脱し、経済活動の再開が打診されている。ゴムの供給リスクが後退していることもネガティブ。タイ中央ゴム市場の集荷量も安定しており、現物相場は9月23日時点でUSSが前週比2.6%安の1キロ=48.53バーツ、RSSが同4.4%安の50.54バーツとなっている。供給サイド主導の価格形成は見られず、改めて中国経済の不安などを背景とした需要悪化リスクを織り込む動きがみられるか否かが焦点になる。

 なお、JPX天然ゴム先物相場は、9月21日に6限月制から12限月制に移行した。上海ゴム相場などと同様に長期タームの取引を提供することで、裁定取引やヘッジ、投機取引のニーズ喚起が目指される。

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