【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、安値ボックス相場が続く
連載 2021-06-28
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=230円で揉み合う展開が続いている。上海ゴム相場の上値の重さ、日経平均株価の急落を手掛かりに230.00円まで下落し、4月26日以来の安値を更新した。しかし、その後は上海ゴム相場が安値からの切り返しを見せたことでJPXゴム相場も下げ一服となり、230円台後半まで切り返している。結果的に230円台で明確な方向性を打ち出せない展開が続いている。売買高も低迷状態が続いた。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元台後半で揉み合う展開になったが、週後半には1万3,000元台を回復する場面もみられるなど、やや底固く推移した。
上海ゴム主導の展開が続いているが、相変わらず投機色の強い値動きになっている。一応は、半導体不足によって各国の自動車生産に遅れが生じていることが、新車用タイヤ需要環境に対するネガティブな動きとして注目を集めている。ただ、景気回復、パンデミックの収束、公共交通機関離れなどの要因から自動車に対する需要そのものは堅調であり、世界的に中古車の需要が急増している。このため、買い換え用タイヤ需要は好調とみられ、タイヤ需要の下振れリスクを本格的に織り込むには至っていない。
一方、中国政府は6月入りしてから高騰傾向にある鉄鉱石と石炭について、調査を開始したと発表した。投機や退蔵など実需以外の要因に基づく価格上昇を取り締まる方針になり、上限価格の設定も議論されている模様だ。こうした動きから鉄鉱石と石炭相場は一時的に下振れしたが、上海ゴム相場に対しては上値圧迫要因になったものの、改めて相場を押し下げるまでの影響はなかった。
米国の利上げが、予想されていたよりも早く実施される可能性が株価やコモディティ相場全体を押し下げたことはネガティブ。ただ、比較的短時間で株価や銅相場などは安値からの切り返しを見せており、ゴム相場に対する下押し圧力は一時的なものに留まった。
原油相場は上昇地合を維持しているが、中国コモディティ市場は全般的に不安定な値動きが繰り返されている。上海ゴム相場も値崩れは回避されているが、上昇再開はみられない中途半端な展開が続いており、JPXゴム相場も動意を欠いている。
タイ中央ゴム市場の集荷量は安定している。台風シーズンに突入し始めているが、天候要因で集荷量が大きく落ち込むような動きは報告されていない。現物相場は、6月24日時点でUSSが前週比1.0%安の1キロ=57.48バーツ、RSSが同0.9%安の59.52バーツ。やや上値が重いが小動きに留まっている。
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