連載コラム「ゴム業界の常識・非常識」(28)
SDGsは慈善事業ではない、儲けていい
連載 2021-05-10
加藤事務所代表取締役社長 加藤進一
最近はあちこちでSDGsの記事やカラフルな輪のマークを見かけます。新聞にも、雑誌にも、企業広告にもでてきます。SDGsは2015年に国連が定めた17の持続可能な開発目標です。日本政府もこの目標に賛同し、初めは政府、自治体主導で始めましたが、最近は企業もこぞって「当社はSDGs活動をやっています」と、PRしています。この17の目標は、貧困や飢餓をなくす、質の高い教育、ジェンダー(男女)平等、海洋資源を守る、自然破壊をなくす、水資源を守ろう等と、いかにも国連や政府が考えた目標ですが、さらに持続可能な経済成長、生産的な完全雇用、働き甲斐のある人間らしい生活も目標になっています。産業と技術革新の基盤を作り、環境配慮型の製品を開発し、持続可能性を追求し、つくる責任、使う責任のためにリサイクルできる製品や原料を開発し、マテリアルリサイクルすることもその目標に一致します。そう考えると、よりよい社会のために、企業もやれることが沢山あります。
加藤事務所は、この1年間、ゴム業界向けにSDGsに関する講演をいろいろな場でやってきました。特に中小ゴム企業向けのSDGsを解説し、「みんなでやろうゴム会社のSDGs」を目指しています。大企業はESG投資の面でもSDGs活動をしているケースがありますが、中小ゴム会社の場合には、会社トップが先頭に、会社をよくするためにこの活動をやってほしいと思います。
よく加藤は講演で説明するのですが、SDGsの開発目標は、すでに皆さんやっていることが多いのです。新型コロナウイルス対策も、17の項目の中の一つ、3-4項の感染症対策なのです。また人材活用、女性社員の積極的な活用、工場の省エネ、廃棄物の削減、定年延長、テレワーク、インターネットを使った営業活動も立派なSDGs活動の一つです。
中小ゴム会社向けにどの会社でもすぐにできる、SDGs活動(中小ゴム会社向け)の簡単なリストを作ってみました。ご覧になっていただければ、これならばわが社でもできる。そうだ、すでに社内でやっていることだと分かっていただけると思います。
この活動はいわば近江商人の三方よしの精神、「商売において売り手と買い手が満足するのは当然のこと、世間よし、社会に貢献できてこそよい商売といえる」と同じです。売り手によし、買い手によし、世間によしの精神です。この世間によしがSDGsの考え方です。
SGDsの考え方は日本人に合っていると思います。世間を考え、周りに迷惑をかけないようにしようと自然にできることなのです。
下のマークはSGDsのマークですが、これはこの活動に賛同している、支援しているとの意思表示です。このマークを使用する時に、国連の承認はいりません。最近はこのマークのバッチを襟元につけたり、講演での資料、配布する参考資料の下の方についているのをよく見かけますが、国連に申請、許可をとる必要はありません。ISOのマークとは違います。名刺にこのマークが入っているのを見かけたこともあります。但し商品にこのマークを付ける場合は国連の認可が必要になります。このマークは乳がん撲滅のピンクリボン、北朝鮮の拉致問題解決へのブルーリボンと同じ考え方です。賛同している、支持していることを表すマークなのです。
中堅中小ゴム会社でも、ホームページに、当社はSGDs活動を推進しています。このようなSGDs活動をやっていますと紹介している会社がすでに10社近くあります。実際この活動をやっているのであれば、社員採用時にも当社はよい会社だ、問題会社ではないというアピールにもなります。
さらにSGDs活動は、会社にとって、社外団体やNGOにお金を寄付することや、慈善活動をすることとは違います。会社はSGDs活動によって、どんどん利益を増やし、儲けていいのです。近江の三方よしで、売りによしでいいのです。よくこの点が誤解されているのではないかと思います。なにか株主が、社員、取引先がいろいろ言ってくるから、お金がかかるが、面倒くさいがやってみるかということではなく、会社の利益追求のためにも、どんどんやっていく活動なのです。「SDGsの精神を遵守しながらも、企業利益を追求してゆく」一見非常識にも思えるこの企業活動の形こそが、これからのゴム業界でも「新しい常識(ニューノーマル)」として求められてゆくのではないでしょうか。
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