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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、商品市況高が支援も小動き

連載 2021-05-10

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=230円台をコアにやや底固く推移した。世界経済の回復に対する信頼感が強まる中、原油や金属相場などの堅調地合がゴム相場もサポートしたが、大きく値上がりするまでの勢いはなかった。国内市場は大型連休を控えていることで、積極的にポジションを取りづらかったことも影響した模様だ。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万4,000元台確立を打診していたが、1万3,000元台後半まで小幅値下がりしている。特に目立ったネガティブ材料は見当たらなかったが、1万4,000元到達後の調整売りが上値を抑えた。

 コモディティ相場全体が高騰局面にあるが、ゴム相場のみがこの流れに乗れない状態が続いている。ゴム相場と同様に自動車市場との関連が深いパラジウム相場は、連日の過去最高値更新になっている。新車市場の回復に加えて、環境規制強化による触媒用貴金属需要の拡大を織り込んでいる。プラチナ相場も同様である。また、銅相場も世界経済の回復期待を反映して、約10年ぶりの高値を更新している。鉄鉱石や石炭相場なども底固さが目立ち、中国コモディティ市場に限定してもゴム相場のみが異質とも言える値動きを続けている。

 インドでは新型コロナウイルスの感染被害が一段と深刻化しているが、コモディティ市場の反応は限定的。短期需要不安よりも、中長期の需要回復を織り込む動きが優勢になっている。

 ただ、ゴム市場においては需給環境が必ずしも重視されておらず、投機色の強さが目立つ状況になっている。2月下旬から続いてきた急落傾向には一服感がみられるが、自立反発的な動きが中心であり、積極的に売買を仕掛ける動きが行われているとは言い難い。5月は、他コモディティ相場に対する割安感や出遅れ感を解消する形で値上がりするのか、このまま投機色の強い不安定な値動きを継続するのかが焦点になる。

 一方、産地では減産期のピークを迎えている。おおむね例年の季節トレンドに沿った動きが観測されているが、マーケットへの影響は限定的。タイ中央ゴム市場の現物相場も、4月28日時点でUSSが前週比0.4%安の1キロ=58.90バーツ、RSSが同2.4%高の62.02バーツと、強弱まちまちの展開になっている。RSSの底入れ感は素直に評価できるが、JPXゴム相場では順サヤ(期近安・期先高)が形成されており、産地主導で安値形成を進めるような動きはみられない。上海ゴム市場の投機マネーの動向に左右される展開を踏襲しつつ、他コモディティ相場に対する割安感解消の有無を打診する局面が続き易い。

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