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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、株高、産地反発で切り返す

連載 2020-09-21

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=180円台中盤まで切り返す展開になった。

 9月入りしてからは、世界的に株式相場の地合が不安定化したこと、産地で価格急騰が集荷量の増加を促したことを受けて、8月31日高値205.50円から9月14日安値175.10円まで急落していた。しかし、その後は株式相場の地合が安定化し始めていること、産地相場が反発していることを受けて、安値から10円幅の切り返しを見せている。

 上海ゴム先物相場も、1トン=1万2,000元の節目割れを回避し、1万2,000元台前半まで切り返している。

 産地相場の地合が不安定化している。7月下旬以降は需給タイト感を背景とした急伸地合が形成されたが、急激な値上がりは農家の供給意欲を高め、9月入りしてから産地相場は急反落した。しかし、相場が急落すると改めて集荷量も落ち込んでおり、産地相場も反発している。どの価格水準であれば需給バランスを安定化させることが可能なのか、手探りの局面になっている。

 タイ中央ゴム市場の9月17日時点の現物相場は、USSが前週比2.9%高の1キロ=53.15バーツ、RSSが同5.3%高の56.46バーツとなっている。RSSの60バーツ台では集荷量の急増が相場を下押ししたが、50バーツ台では集荷量が急減しており、値崩れを起こすことは回避されている。

 8月の中国新車販売台数は前年同月比11.6%増の218万6,000台となった。5カ月連続でプラスとなり、二桁成長も維持されている。消費者マインドの改善で乗用車販売が伸びている一方、インフラ投資で商用車販売が急増する構図が続いている。新車販売市場は欧州の回復がやや遅れているが、世界的には正常化のプロセスを維持している。

 9月は、株式相場の地合も不安定化している。コロナ禍で普及した在宅勤務やリモート会議などの恩恵を受けるハイテク株の急伸地合が、ゴムを含む素材市況全体をサポートしていた。しかし、そのハイテク株に利食い売りを入れる動きもみられ、リスク投資の地合が不安定化している。非鉄金属相場は総じて底固く推移しているが、原油市場で改めて需要不安を織り込む動きがみられるなど、マーケット環境が不安定化している。ただ、9月中旬は株安傾向に一服感がみられたことも、改めてゴム相場を支援している。

 リスクオン環境と集荷量減少を背景とした産地相場高が、JPXゴム相場を改めて押し上げている。9月下旬もこの地合が維持されるのか、それとも価格上昇で改めて産地集荷量の急増を促すような動きがみられるかが焦点になる。

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