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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、高騰続くも供給増の兆候

連載 2020-09-07

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=205.50円まで急伸して1月20日以来の高値を更新した後、180円台中盤まで急反落する展開になった。

 産地相場が需給タイト感を背景に急伸地合を続ける中、JPXゴム市場でも当限が昨年7月31日以来の高値となる221.60円まで値上がりし、期先限月に対しても買いが膨らんだ。しかし、9月3日の取引では、全限月に対してまとまった売りが入り、高値からは大きく下押しされる展開になっている。

 上海ゴム先物相場も1トン=1万2,000元台でじり高の展開になり、中心限月ベースでは1月21日以来の高値を更新した。しかし、調整売りで高値からは大きく下押しされている。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は、9月3日時点でUSSが前週比8.6%高の1キロ=56.85バーツ、RSSが同6.3%高の60.05バーツと急伸地合が続いている。RSSは8月19日に50バーツ台に乗せたばかりだが、早くも60バーツ台に乗せている。

 産地需給のタイト感を背景とした高騰相場が続いているが、徐々に需給環境に変化の兆候が観測され始めている。急ピッチな値上がり傾向を受けて、集荷量が徐々に上向き始めているのだ。RSSが50バーツの節目を突破するのと前後して集荷量の水準は若干切り上がっていたが、特に9月に入ってからはさらに集荷量が増え始めている。

 現在の価格水準では、急ピッチな高騰相場が続いているといっても、需要抑制効果は限定されやすい。各国ともに自動車販売市場は改善傾向にあり、タイヤ用ゴム需要は逆に上振れリスクが強く警戒される状況にある。しかし、価格高騰で供給量が大きく上振れすれば、産地需給のタイト感は解消に向かい、ゴム相場高騰の必要性は薄れることになる。

 ゴム相場の高騰は、コロナ禍によって需要環境と供給環境がともに大きなダメージを受けたものの、需要が供給に先行して正常化に向かっていることに起因するものである。こうした中、価格高騰で需要の抑制、もしくは供給の拡大が求められているが、供給水準に切り上げの兆候が観測されていることは注目に値する。

 高騰相場が産地の集荷、在庫売却などの動きを促せば、ゴム需給のタイト感は解消され、ゴム相場は当面のピークを確認する方向性になる。一方、十分に供給環境の改善が進まない場合には、さらに産地相場の値上がりを促すことで、供給環境を刺激する必要性が維持されることになる。どの価格水準で需給リバランスが進むのかが焦点になる。

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