【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、産地主導で半年ぶり高値
連載 2020-08-31
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=180円台中盤まで急伸する展開になった。8月は、産地相場高の一方で上海ゴム相場の上値が圧迫される中、2週間にわたって170円台でのボックス相場が続いていた。しかし産地相場の急伸地合が続く中、改めて上値を切り上げる動きを見せている。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元代中盤でやや底固く推移した。大きな値動きには発展していないが、8月入りしてからの高値を更新している。
JPXゴム相場は約半年ぶりの高値を更新しているが、上昇相場の原動力になっているのは産地相場の高騰である。タイ中央ゴム市場の現物相場は、8月27日時点でUSSが前週比7.0%高の1キロ=51.69バーツ、RSSが同9.6%高の55.14バーツになっている。RSSは8月19日に50バーツの節目を突破したばかりだが、早くも55バーツを上抜き、昨年7月上旬以来の高値を更新している。7月下旬から続く産地相場の急伸地合が、消費地相場も大きく押し上げている。
産地の集荷量は、必ずしも大きく落ち込んでいる訳ではない。むしろ横ばいから微増傾向にあり、供給トレンドとしては上向きになっている。しかし、需要環境の回復ペースと比較すると、供給環境の回復ペースは鈍く、産地で需給タイト感が急激に高まっている。
新型コロナの感染被害は、天然ゴムの生産と需要の双方に対して大きなダメージをもたらした。この状況にはまだ変化がみられないが、最大市場の中国では新車用タイヤは6月、買い替え用タイヤは4月には、すでに前年同月比プラスになっているとみられる。
欧米市場でも4月には新車用タイヤがほぼゼロとなり、買い替え用タイヤも半減したと推計されているが、6月時点では新車用で前年同月の7~8割の水準を回復したとみられる。
一方、供給サイドでは日本でも猛暑をもたらしている天候不順、さらには労働力不足の問題、新型コロナウイルスによる工場や流通網の混乱もあって、十分な供給量を確保できていない。
コロナ禍からは需要と供給の双方が回復しているが、そのペースの違いが、産地主導の急伸相場を促している。需要環境だけでは正当化できない価格水準だが、需要と供給との歪みが、棒上げとも言える高騰相場をもたらしている。
なお、8月25日には8月限が納会を迎えたが、受渡価格は170.70円となった。7月限の159.00円からは11.70円の値上がりであり、昨年12月限以来の高値を更新している。ゴム相場の実勢が改善傾向にあることが、再確認できる。
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