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連載「つたえること・つたわるもの」(88)

エッセンシャル・ワーカーに拍手+感謝のバトンパス〈先贈り〉。

連載 2020-04-28

 ところで、いま医療従事者とその家族へのいやがらせが頻発している。看護師である母親が子どもと公園で遊んでいると、何人かの母親から「(病院で働く)看護師さんは、公園に来ないで!」言われた、会社員の男性は妻が看護師であることを理由に、上司から「会社に来ないで、家にいろ!」と言われた、また、医師の子どもが保育園の登園拒否を受けるなど、新型コロナ感染対策の最前線で働く人たちへの、謂れのないハラスメント(いやがらせ)が続いている。

 その一方で、新型コロナによる死者が1万2000人を超え、2カ月以上も外出禁止令が続くニューヨークでは、先月末(3月27日)の金曜日、2分間にわたって何千人もの市民が、屋上やバルコニー、あるいは窓から身を乗り出して、昼夜をわかたず奮闘している医師、看護師などの医療従事者、警察官、消防士、食料品の従業員、地下鉄の職員、トラックの運転手、ごみ収集の作業員たちなど、人びとの生命や町の安全のために働く人びとに向けて、感謝の気持ちを込めた拍手や歓声、鍋を叩く音などが鳴り響いた。

 これは、ソーシャルメディアの呼びかけで始まった「CLAP(拍手)FOR NYC(ニューヨーク)」で、これまでにイギリス、イタリア、スペインなどで行われた「CLAP(拍手)FOR OUR CARERS(医療者や介護者)」と同じように、新型コロナ対策の最前線で働く人たちへ拍手をおくるムーブメントである。

 彼らのように、人びとの生命を守り、ライフライン維持のために欠くことのできない仕事をしている人のことを、英語でエッセンシャル・ワーカーという。エッセンシャル(essential)を辞書で引くと、「欠くことのできない、必須の、非常に重要な」とある。今回、ニューヨークの「CLAP FOR NYC」を報じた記事を読んで、新型コロナとの戦い(患者の救命、感染拡大防止)ばかりに目を奪われていた私は、病院で患者を助ける医療従事者だけが新型コロナと戦っているのではなく、スーパーマーケットで食料品を売っている人、鉄道やバスを動かしている人、さまざまな物資を輸送しているトラックのドライバーなど、身近なところで黙々と働く、たくさんのエッセンシャル・ワーカーもまた、私たちの命と生活を守り、支えてくれている人たちなのだ、という重要な視点が欠けていた。

 先週(4月20日)、東大阪市市庁舎で〈最前線で感染症患者の治療にあたる医療、介護関係者に感謝と応援の気持ちを込めて拍手を贈る〉取り組みとして、「月曜日の正午には #CLAP FOR CARERS(クラップ フォー ケアラーズ)」が始まっているそうだが、さらに願わくば、「CLAP FOR OUR ESSENTIAL WORKERS」として、すべてのエッセンシャル・ワーカーへの感謝へと広げるべきではないだろうか。

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