連載「つたえること・つたわるもの」(82)
「一隅を照らす」というミッション――〈今いる場所で希望の灯をともす〉
連載 2020-01-28
さらに検索すると、「一隅を照らす(Brighten the World in Your Corner)」と題する同紙の「中村哲医師特別サイト」に、見渡す限りの砂の大地に引いた一本の用水路によって緑の沃野に変貌を遂げたガンベリ砂漠=2008(ビフォー)⇒2014(アフター)の映像があった。中村医師が「大地の医者」「国を医(いや)す上医」と呼ばれる所以を示す、感動的な光景である。
また、同サイトでは、中村医師が座右の銘とした「一隅を照らす」という禅語を、西日本新聞の編集部が〈今いる場所で希望の灯をともす〉と翻訳している。さきに紹介した「それぞれが自分の持ち場で行動することが、平和につながるんだ」と同じように、中村医師が遺した〈いのち〉のことばを、西日本新聞のミッションとして受け止め、新聞記者の〈からだ〉感覚を通してとらえた〈いのち〉のことばである。
荒廃したアフガニスタンとパキスタンで市民とともに人道・復興支援に尽くした中村さんが、好んで使ったのが「一隅を照らす」という言葉でした。
<今いる場所で希望の灯をともす>
その意志を継ぎ、自分なりの一歩を踏み出すために、西日本新聞は中村さんの生き方と勇気に学ぶウェブサイトを開設しました。訪れた方々にとって、自分に何ができるか、自分はどう生きるかを考えるきっかけになれば幸いです。
西日本新聞の「中村哲医師特別サイト
中国は唐代の禅僧、臨済義玄に「随處作主 立處皆眞」がある。読み下し文では「随処(ずいしょ)に主(しゅ)と作(な)れば 立処(りっしょ)皆(みな)真(しん)なり」だが、大意を私訳すると「どのような境遇に置かれようとも、決して他人のせいにせず、自分が人生の主人公として行動すれば、自分がいま立っているところがそのまま真実の場所となる」というほどの意味である。「随処に主たれ」で知られるこの禅語もまた、やはり<今いる場所で希望の灯をともす>と読み替えることができるのではないだろうか。
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