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連載「つたえること・つたわるもの」(79)

伝える(書く/話す)・伝わる(読む/聴く)を養う国語教育。

連載 2019-12-10

 それはさておき、最初の第一文をトピックセンテンス(中心文)から書くと、どうなるか。

 大きなクワガタをつかまえました。きのう買ってもらった虫かごに入れようと思って、きょうの朝、弟と、近くの林の中で、虫とり網でクワガタをつかまえました。

 これなら、「大きなクワガタをつかまえた(主張)→虫かごに入れるため(理由)→虫とり網でクワガタをつかまえた(主張)」というパラグラフのメインコンセプト(主要な狙い)が明確になり、「クワガタをつかまえた」子どもの喜びが〈伝わる〉ストーリーになっている。さらに、「虫かごの大きさ」と「虫とり網の形状」について、新たにくわしい説明文(サポーティングマテリアル=支持文)を加えると、どうなるか。

 大きなクワガタをつかまえました。きのう買ってもらった虫かごに入れようと思って、きょうの朝、弟と、近くの林の中で、虫とり網でクワガタをつかまえました。(中心文+理由+主張=メインコンセプト)虫かごは、プラスティックのケースで、幅二三センチ、高さ一五センチ、奥行一五センチの大きさがあります。(支持文)虫とり網は、二メートルの長さまで伸びる二段式の棒の先に、口の広さ三六センチ、深さ七五センチのふくろがついています。(支持文)

 最初に添削した絵日記の文章では、キーコンセプトの「大きなクワガタをつかまえた」子どもの喜びが明確〈伝わり〉ましたが、さらに虫かご虫とり網のくわしい解説文(サポーティング・マテリアル)が入ることで、クワガタとりの臨場感に奥行きが加わった。

 もとより私は国語教育の専門家ではないが、22歳で雑誌記者になってから今日まで、雑誌や書籍、電子媒体などに52年間書き続けている人間として、伝える(書く/話す)・伝わる(読む/聴く)を養うための国語教育には、わかりやすく書くための「パラグラフライティング」教授法が大きなヒントになると思う。

【プロフィール】
 原山 建郎(はらやま たつろう) 
 出版ジャーナリスト・武蔵野大学仏教文化研究所研究員・日本東方医学会学術委員

 1946年長野県生まれ。1968年早稲田大学第一商学部卒業後、㈱主婦の友社入社。『主婦の友』、『アイ』、『わたしの健康』等の雑誌記者としてキャリアを積み、1984~1990年まで『わたしの健康』(現在は『健康』)編集長。1996~1999年まで取締役(編集・制作担当)。2003年よりフリー・ジャーナリストとして、本格的な執筆・講演および出版プロデュース活動に入る。

 2016年3月まで、武蔵野大学文学部非常勤講師、文教大学情報学部非常勤講師。専門分野はコミュニケーション論、和語でとらえる仏教的身体論など。

 おもな著書に『からだのメッセージを聴く』(集英社文庫・2001年)、『「米百俵」の精神(こころ)』(主婦の友社・2001年)、『身心やわらか健康法』(光文社カッパブックス・2002年)、『最新・最強のサプリメント大事典』(昭文社・2004年)などがある。

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