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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、5カ月ぶりの高値更新

連載 2019-12-09


マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=190円台後半まで急伸する展開になった。6月24日以来となる、約5カ月ぶりの高値を更新している。

 米中通商合意への期待感を背景に、11月は主要コモディティ市場で極端な弱気スタンスの修正が進み、東京ゴム市場でも主に海外ファンドが売りポジションの整理を進める形で上昇トレンドが形成された。ただ、11月下旬以降はファンドのショートカバー(買い戻し)に一巡感が広がったこともあって、上げ一服となり、高値ボックス傾向が進んでいた。米中通商協議の先行きが依然として読みづらいこともあり、薄商いの持ち高調整中心の展開になっていた。しかし、12月5日の取引で突然に買い圧力が強まり、一気に200円の節目に迫る値動きになっている。

 上海ゴム先物相場も1トン=1万2,000元台中盤をコアに揉み合う展開になっていたのが、12月5日の取引で突然に1万3,000元台に乗せている。東京ゴム相場と同様に、安値修正局面が依然として終っていないことが示されている。

 もっとも、何かゴム相場の急伸を促すような明確な買い材料が浮上した訳ではない。米中通商協議に関しては、トランプ米大統領が、合意時期が来年11月の大統領選後にずれ込む可能性を示唆したことで、むしろパニック的なリスクオフ圧力が発生するような場面も観測されている。この流れで株価や主要商品市場では調整圧力の強さが目立っていたが、ゴム相場のみが高値を維持し続け、逆に一気に上値を切り上げている。

 産地相場は、特に目立った動きを見せていない。タイ中央ゴム市場では、USSが1キロ=39バーツ台、RSSが41バーツ台での取引であり、先週の取引レンジをほぼ踏襲している。為替市場で高騰が続いていたタイ通貨バーツが反落していることを考慮すれば、むしろ円建ての東京ゴム相場は値下がりが自然な状態だったが、産地相場の動向も無視した高騰相場になっている。

 東南アジアで広がる「ペスタロチオプシス」による生産障害のリスク、中国の11月経済指標の改善による短期的な景気底入れ感の影響なども指摘されているが、主に買いが膨らんでいるのは期先限月であり、内部要因やチャート主導の投機色の強い値動きが続いている可能性が高い。必ずしもマクロ投資環境や需給環境は重視されておらず、他資産価格と大きくバランスが崩れた値動きが続いている。当先の順サヤ(期近安・期先高)は12月5日時点で24.40円に達しており、期先限月に異常なプレミアムが加算されている。

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