連載コラム「ゴム業界の常識・非常識」⑱
ゴムはどこまで伸びるか?
連載 2019-09-17
加藤事務所代表取締役社長 加藤進一
ゴムの特長に、引っ張ると伸びるという性質があります。どのぐらい伸びるのでしょう?風船も天然ゴムラテックスからできていますが、空気を入れていくとどんどん膨らみ、確かに長さ方向で5倍ぐらいは伸びます。
どうしてゴムは伸びるのでしょうか?東京理科大学の伊藤先生が書かれた「ゴムはなぜ伸びる?」という本があります。そこに詳しくなぜゴムが伸びるかが説明されています。
どこまで伸びるか?鉄であれば2倍伸びないうちに切れてしまいます。プラスチックでも1.5倍以上の伸びると、それ以上では戻る力はなくなって、へなへなになってします。それに比べゴムは4倍ぐらい延ばしても、まだ元に戻ろうとする力(応力)があります。だから輪ゴムは5倍ぐらい伸びても元の形に戻ろうとするので物を束ねる目的に使えます。
ゴムの種類、配合によっても違いますが、元の長さの7倍まで伸びるゴムもあります。ゴムが面白しろいのは、配合によって、その伸びる程度を変えることができることです。任意の伸びに設計できるのです。ただ伸びることと、元の長さに戻ろうとする力、丈夫さとは相反する関係になります。例えばタイヤのゴムはいろいろありますが、引っ張る強度(丈夫さ)を重視しているので、伸びはだいたい4倍ぐらいです。一方輪ゴムは伸びて、戻ることが重視されているので、7から8倍まで伸びます。
糸ゴムというのがあります。下着、靴下の縮まる部分に細いゴムの糸やひもが折り込まれています。製法は薄いゴムシートを作りそれをスリットしてカットして作ります。よって平たい輪ゴムをスリットしたようなものです。これも伸びて戻ることを重視しています。
大きなビルの下に敷く免震ゴムという部品があります。地震の時に、この免震ゴムは横にずれて、上のビルがそれほど揺れないようにするのですが、これも横に大きくずれます。いわばゴムが横に伸びるようなものです。どのぐらいずれるかはブリヂストン提供の動画「https://www.youtube.com/watch?v=sl44Z9wTLNo」を見るとよくわかります。
ゴムは伸びるとゴムの温度が上がり、縮めて元の長さに戻すと温度が元に戻ります。伸ばすエネルギーがゴムのばねの力に貯えられるのと、ゴム分子のエントロピー減少分の分だけゴムの温度上昇になるのでしょう。輪ゴムを唇に当てて伸ばすと温度があがるのがわかります。そこで輪ゴムを伸ばして、それを常温まで冷えるのを待って、それをもとの長さまで戻すとかえって温度が下がります。それを使って缶ビールを冷やすという実験がYOUTUBEの「https://www.youtube.com/watch?v=MT3ZIpCarR8」に載っています。空の缶ビールでは2℃冷えました。本当にそうなるかやってみたい実験です。
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