連載「つたえること・つたわるもの」(71)
盂蘭盆会法要での法話。愛娘の死が父を育てる、おかげさまの物語。
連載 2019-08-20
出版ジャーナリスト 原山建郎
先週(8月13~16日)は旧のお盆だった。地方によっては、盆棚にナスで作った牛(精霊牛)、キュウリで作った馬(精霊馬)を飾り、家の門口で迎え火・送り火を焚く習わしがある。これは日本古来の祖霊信仰と仏教が融合して始まったもので、お盆の時期にあの世から家に帰ってくる先祖の霊を祀る行事で、長崎の精霊流しや京都の大文字焼き(五山の送り火)などの行事が、夏の風物詩として親しまれている。
一昨日、父の墓所がある中原寺(浄土真宗本願寺派)の聞法会館で営まれた盂蘭盆会法要並びに全戦没者追悼法要に参列した。浄土真宗では、お盆の時期に先祖の霊がこの世(此岸)に返ってくるという理由で盂蘭盆会法要を営むのではなく、故人(先祖)はすでに浄土(彼岸)で仏となっているのだから、此岸で暮らしている私たちが報恩謝徳(おかげさま)の念を深めるために、盂蘭盆会法要を営むのだという。
「盂蘭盆会法要」お勤めのあと、本願寺派布教使・松岡満優さん(群馬県蓮照寺住職)の法話を拝聴した。講題(演題)は表示されていなかったが、法話の途中で板書された「平生業成」が重要な主題だと思う。「平生(へいぜい:死んでからではない、いま生きているとき)業成(ごうじょう:重要な人生の目的は、いま完成できる)」の語意だけでは、いったい何のことかよくわからなかったが、難病のメチルマロン酸血症で入退院を繰り返し、5歳半で亡くなった愛娘の話をする中で、「私たちは、これから救われるのではない。すでにいま救われているのだ、ということです」というひと言が、私の胸にストンと落ちた。
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