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連載コラム「ゴム業界の常識・非常識」⑰

ゴム産業にもSGDs活動が。SGDsとは何?

連載 2019-07-01

加藤事務所代表取締役社長 加藤進一

 最近、SDGsというキーワードをよく見かけませんか?SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略です。これは2015年国連の国連持続可能な開発サミットで定めた活動で、日本政府もこの持続可能な開発目標に力を入れています。

 下のマークがSDGsのマークです。ゴム産業にもこのSDGsの動きが広がってきました。ある合成ゴム会社(大手化学会社)はサステナビリティを会社のテーマとして掲げ、気候変動対応、環境負荷低減、資源有効利用を推進しています。社員がこのマークのピンバッチを付けています。


 合成ゴム会社、カーボンブラック会社、ゴム材料メーカーであれば、製品を製造する時に、CO2削減、リサイクル、有害な排水排ガスを減らすという運動になるでしょう。これは化学会社として当たり前の活動でしょう。

 本来のSDGsの運動には、貧困をなくす、飢餓をなくす、質の高い教育、ジェンダー平等、海洋資源を守る、自然破壊をなくす等もあり、さらに持続可能な経済成長と生産的な完全雇用、働き甲斐のある人間らしい生活も目標になっています。日本の会社の場合、貧困をなくす、飢餓をなくす、質の高い教育をという目標はクリアしていると思いますが、海外工場まで含めると、再度点検しなければならないケースもあるでしょう。ジェンダー平等、持続可能な経済成長と生産的な完全雇用、働き甲斐のある人間らしい生活となると日本の会社も再度確認する必要があるのでは?

 ゴム、タイヤ製品製造会社でも同じことが言えます。環境への配慮、労働環境、製造時のCO2排出、マテリアルリサイクル等、いろいろなテーマがありそうです。

 ゴム材料である天然ゴムの場合は、貧困をなくす、飢餓をなくす、質の高い教育、自然破壊問題がもっと深刻です。天然ゴムの多くは、タイ、インドネシア、ベトナム、マレーシアの農地、森林地帯で製造されています。実は天然ゴムの本当の原材料のゴムラテックスはどの農園からとったゴムラテックスを使ったかはトレースできていないです。どの会社、工場でベール状の天然ゴムブロックを作ったかはわかりますが、この天然ゴムは本当の原料の農園がわからないのです。農園と加工会社の間に多くのディーラーがはいっており、またラテックス、燻製前の天然ゴムシートにロット番号が入っていないので、トレースできないのです。

 世界のタイヤ会社ではGlobal Platform for Sustainable Natural Rubber (GPSNR)という活動を2018年から始めています。天然ゴムのバリューチェーンにおける、社会面・経済面・環境面の改善を目的とした「持続可能な天然ゴムのためのプラットフォーム」です。ここでは、天然ゴムのSGDsを守れるようにガイドラインを作ろうとしています。人権尊重の促進、土地収奪や森林破壊の回避、生物多様性や水源の保護、収量の拡大、サプライチェーンの透明性とトレーサビリティ向上に取り組んでいきます。日本自動車タイヤ協会でもその紹介をしています。

 日本ゴム協会でも2019年7月26日の夏季講座(浜松で開催)で、「SDGsが目指す社会における高分子材料の使い方」の講演があります。このような講演テーマが増えてくると思います。

 ゴム産業にもSGDsは避けて通れないテーマになりつつあります。自動車メーカーからSGDsを守ってゴムタイヤ製品を製造しなさい。そうしなければ買いませんという要求もあります。

 ゴム産業とSDGsはまだ関係ないやと思われているかもしれませんが、もうすぐそこまでこの活動がきています。

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