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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、産地相場も上昇傾向強まる

連載 2019-06-03


マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=190円台前半から中盤、TSRが160円台前半でやや底固く推移した。産地供給不安から期近限月の急伸地合が続く中、期先限月も横ばいから小幅高になっている。

 5月27日に5月限が納会を迎えたが、納会値は212.00円となり、4月限の186.00円を26.00円上回った。5月中旬から産地の供給不安を反映する動きが強まり、納会値としては今年最高値を更新している。6月限が納会になった後も目立った値崩れはなく、逆に210円台中盤まで更に値位置を切り上げている。

 今年はエルニーニョ現象が発生しており、東南アジアでは高温・乾燥に対する警戒の声が聞かれる。このため、減産期から生産期への移行が遅れるのではないかとの警戒感が、東京ゴム市場では特に期近3限月を大きく押し上げている。

 日本の気象庁は、「今後夏にかけてエルニーニョ現象が続く可能性が高い」との予想を発表しており、グローバルな乾燥傾向が東南アジアでも深刻化すると、東京ゴム相場も当限が一段高を試し、つれて期先限月も上値追いの展開になる可能性がある。

 ただ、現状では大きく上昇しているのは6-8月限に限定されており、9-11月限の値動きは鈍い。あくまでも短期供給リスクであり、マクロな需給見通しに修正を迫るレベルの供給不安とは評価されていない。

 30日終値時点では当先の逆サヤ(期近高・期先安)が22.70円に達しており、過熱感が目立つ。ここから期近限月の急伸にブレーキを掛けるのか、それとも期先限月を押し上げる動きがみられるのかが、6月上旬のゴム相場の焦点になる。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元水準で方向性を欠いている。中国株、人民元相場ともに明確な方向性を打ち出せていない。米中対立激化で原油相場などは上値の重い展開になっているが、上海ゴム相場に対する影響は限定されている。

 タイ中央ゴム市場の集荷量は緩やかな増加傾向にあり、減産期から生産期への移行時期にあることが確認できる。ただ、まだ通常の水準を回復するには至っていない。現物相場は、5月30日時点でUSSが前週比3.1%高の1キロ=52.74バーツ、RSSが同3.5%高の55.31バーツ。前週までは小幅高に留まっていたが、5月末にかけて産地相場も上昇ペースが加速しており、今年最高値を更新している。

 コモディティ市場全体では米中対立の実体経済に与える影響が注目されているが、ゴム市場では供給リスクの織り込みがいつまで続くのかが焦点になっている。

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