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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、景気減速と刺激策への期待

連載 2019-05-20


マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=180円台中盤での保ち合いを経て、190円台前半まで反発、TSRが160円台を一時割り込んだ後、160円台中盤まで反発する展開になった。

 前週は米中貿易摩擦がゴム相場の上値も圧迫していたが、米中両国が制裁・報復関税案を発表したことで短期的な材料出尽くし感から、下げ一服となっている。中国政府の景気刺激策への期待感も、ゴム相場を下支えした。

 上海ゴム先物相場は中国経済の減速懸念で1トン=1万1,000元台中盤まで軟化したが、16日の取引では政府の景気刺激策に対する期待感から1万2,000元台を回復するなど、荒れた展開になっている。

 9-10日の米中通商協議に関しては特に目立った進展がなく終わり、週明け13日の国際金融市場は大荒れの展開になった。米中貿易摩擦の深刻化・長期化に対する警戒感がゴム相場も下押しした。

 また、15日に発表された中国の4月鉱工業生産と小売売上高が大きく下振れし、中国経済の減速懸念が強くなったこともネガティブ材料視された。

 4月の中国新車販売台数も前年同月比14.6%減の198万500台と2カ月ぶりに2ケタの減少となり、4月に政府が新たな減税策を導入したものの、大きな効果は得られていないことが確認されている。年後半には持ち直すとの楽観的な見方もあるが、現状では新車向けタイヤ需要環境の悪化が目立つ。

 ここ最近は持ち直し気味だった中国経済が通商摩擦の長期化の影響もあって、4月には改めて大きく下押しされた可能性が高まっている。このため、近く中国政府が大規模な景気刺激策を発表するのではないかとの観測が、上海ゴム相場を下支えし始めている。

 一方、タイ中央ゴム市場の現物相場は、16日時点でUSSが前週比0.6%安の1キロ=50.28バーツ、RSSが同0.1%安の53.25バーツ。産地相場には特に目立った動きはみられず、もっぱら上海ゴム市場における投機マネーの動向に依存していることが確認できる。産地では、乾季から雨季への移行が進んでいるが、ゴム相場に対する影響は限定されている。

 米中通商リスクの織り込みに一服感が強まる中、改めて上海ゴム相場の動向が注目されている。「実体経済の減速」と「景気刺激策への期待感」のどちらが優勢になるのかが問われている。

 一方、国内の生ゴム指定倉庫在庫は増加傾向が続いており、過剰在庫の解消が進んでいないことが注目されると、上海ゴム相場の動向と関係なく東京ゴム相場に対して下振れリスクが高まる。

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