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連載「つたえること・つたわるもの」(64)

声に出して読みたい『萬葉集』、琉歌で詠まれた『歌声の響き』。

連載 2019-04-23

 1975年、今上天皇がまだ皇太子の時代、初めて沖縄のハンセン病療養所「沖縄愛楽園」を訪れたとき、その帰り際に入所者から、船出を祝う沖縄民謡「だんじょかれよし」の合唱が起きたという。皇太子ご夫妻は真夏の炎天下に立たれたまま、その歌声をじっと聞いておられた。そのときの光景を、皇太子殿下は沖縄学の外間守善(ほかま・しゅぜん)さんに学んだ古謡集で琉歌作りを覚えた二首の琉歌(8・8・8・6の30音の琉球の定型詩)による御歌(みうた)に詠まれ、さらに妃殿下(美智子皇后)はその琉歌にふさわしい曲を付けた『歌声の響き』(作詞・天皇陛下、作曲・皇后陛下)は、ことし2月24日、天皇在位30年の式典において、歌手の三浦大知さんの独唱によって披露されたのである。

だんじよかれよしの歌声の響 見送る笑顔目にど残る(私たちの旅の安全を願うだんじよかれよしの歌声が響き、見送ってくれた人々の笑顔が、いつまでも私の目に残っています)/だんじよかれよし(ダンジュカリユシ)の(ヌ)歌声(ウタグイ)の(ヌ)響(フィビチ)/見送る(ミウクル)笑顔(ワレガウ)目(ミ)に(ニ)ど(ドゥ)残る(ヌクル)

☆ だんじょかれよしの 歌や湧上がたん ゆうな咲きゆる島 肝に残て(私たちが立ち去ろうとすると だんじよかれよしの歌声が湧き上がりました。ゆうなの花が、美しく咲いている島の人々のことがいつまでも心に残っています)/だんじよかれよし(ダンジュカリユシ)の(ヌ)歌や(ウタヤ)湧上がたん(ワチャガタン)/ゆうな(ユウナ)咲きゆる(サチュル)島(シマ)肝(チム)に(ニ)残て(ヌクティ)


 ちなみに、ダンジュ・カリユシ(誠に・嘉例吉)とは、旅立つ人の無事を祈る「旅歌」のこと。また、「ゆうな」の花は、和名を「オオハマボウ(アオイ科の常緑高木)」という。

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