連載「つたえること・つたわるもの」(64)
声に出して読みたい『萬葉集』、琉歌で詠まれた『歌声の響き』。
連載 2019-04-23
高校時代、私が楽しみにしていた古文の授業に、『万葉集』の暗唱があった。日本固有の詩歌である和歌(やまとうた)には、短歌(5・7・5・7・7)、長歌(5・7・5・7……7・7)、旋頭歌(5・7・7・5・7・7)などがある。本来、前出の短歌2首には、「石ばしる…」に「志貴皇子(しきのみこ)懽(よろこびの)御歌(みうた)一首」という【題詞】(前書き、説明文)がついている。同じように「うらうらに…」の【題詞】には「廿五日(天平勝宝5年2月25日)作歌(つくれるうた)一首」と書かれている。短歌(長歌)の歌意を考える上で、その背景や作者の思いを知るための【題詞】は重要な役目を担っている。
古文の授業では、【題詞】を含む長歌の暗唱をさせられた。たとえば、『万葉集』巻一(ひとまきにあたるまき)雑歌(くさぐさのうた)の第2歌は、「国見の歌」だが、これを丸ごと全部、暗唱するのである。
【題詞】高市崗本宮御宇天皇代[息長足日廣額天皇]/ 天皇登香具山望國之時御製歌
高市(たけち)崗本宮(をかもとのみや)に天皇(あめのしたしらしめししすめらみこと)の代(みよ)[息長(おきなが)足日(たらしひ)廣額(ひろぬか)の天皇(すめらみこと)]
天皇(すめらみこと)香具山(かぐやま)に登(のぼり)まして望國(くにみ)したまへる時 みよませる御製歌(おほみうた)
山常庭 村山有等 取與呂布 天乃香具山 騰立 國見乎為者 國原波 煙立龍 海原波 加萬目立多都 怜A國曽 蜻嶋 八間跡能國者 ※A(忄(りっしんべん)+可)
大和(やまと)には 群山(むらやま)あれど とりよろふ 天(あめ)の香具山(かぐやま) 登り立ち 国見をすれば 国原は 煙(けぶり)立ち立つ 海原は 鷗(かまめ)立ち立つ 美(うま)し国ぞ 蜻蛉島(あきつしま) 大和(やまと)の国は
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