【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、上海主導で大幅続落
連載 2019-04-01
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=180円、TSRは160円の節目水準まで急落する展開になった。RSSは2月13日以来となる約1か月半ぶりの安値を更新している。
世界経済の減速懸念を背景に上海ゴム相場が改めて急落したことが嫌気されている。上海ゴム相場は3月中旬に1トン=1万2,000元の節目を割り込んだが、その後は月末に向けて下落ペースが加速し、1万1,000元台前半までコアレンジが切り下がっている。
世界の株式市場は、明確な方向性を打ち出せない展開になっている。景気減速懸念に対する警戒感が強い一方で、各国中央銀行が利上げ停止などの政策支援を強化する中、昨年10-12月期にみられたような本格的な株安環境への回帰は見送られている。
ただ上海ゴム相場に関しては、実体経済の減速傾向に強い警戒感を示しており、3月中旬以降はほぼ一貫して戻り売り優勢の展開になっている。1万1,000元を割り込むと、1万元の節目を意識した展開になる。東京ゴム相場は上海ゴム相場との間に極めて強い相関関係を示しているため、上海ゴム相場の下げ止まりの有無が焦点になる。
タイでは引き続き乾燥状態が続いており、マレーシアでも降水量が落ち込み始めている。インドネシアは降雨が続いていることで良好な土壌水分環境が農産物の生産を促しているが、東南アジア全体としては乾季傾向が強くなっている。
タイ中央ゴム市場の集荷量は抑制された状態が続いている。現物相場はこれまで、東京や上海ゴム相場の値下がり傾向を無視する形で年初来高値更新を繰り返していたが、3月28日時点ではUSSが前週比0.1%安の49.47バーツ、RSSが同0.3%高の54.15バーツと上げ一服感が浮上し始めている。このまま産地相場の値上がり傾向にブレーキが掛かると、消費地相場の値下がり傾向が追認されることになる。
4月1日からは、タイ、インドネシア、マレーシアの3カ国による輸出規制が開始される予定だったが、タイの参加が遅れる見通しになっている。3月24日に行われた総選挙の結果を受けて、親軍政派と反軍政派の双方が政権樹立を宣言しており、政局が混乱している。このため、輸出削減策の承認手続きが遅れており、タイの輸出規制参加は5月にまで先送りされる可能性が高くなっている。生産国の市況対策に対する信頼感が低下していることも、ゴム相場のダウントレンドを追認している。
なお、4月のゴム相場は過去30年で70%の確率で下落しており、平均で前月比2.6%安となっている。
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