連載「つたえること・つたわるもの」(57)
「おはよう」は、予祝という祈りの〈あいさつ〉。
連載 2019-01-22
少しむずかしい話になったので、母親ならだれもが実感できる、ブログの一文を紹介した。
赤ちゃんはひとりでは生きられないが、母親がひとりいれば「赤ちゃん的必要」の過半は満たされる。子どもが成長すると、「友だち」が必要になる。「先生」も必要になる。「好きな異性」も必要である。
なるほど、わが子との皮膚感覚(スキンシップ)を介して、「赤ちゃんはひとりでは生きられない」ことを、母親がいちばんよくわかっている。また、「赤ちゃん的必要」の過半を満たす母親の役だけでなく、ときには「友だち」や「先生」や「好きな異性」の役もこなさなければならない。しかし、わが子はどんどん大きくなる、言葉をしゃべるようになる。子どもは成長するにつれて、たくさんの「友だち」や「先生」や「好きな異性」があらわれ、人間としての「ひとりでは生きられない度」は徐々に高まり、深まっていく。
そして、子ども(やがて幼児→少年→青年→壮年へと変容する)が社会的に成熟するにつれて、「支えてくれる他者たち」の数が、つまり「その人なしでは生きてゆけない人」の数がどんどん増えてくる。
『ひとりで生きられないのも芸のうち』(内田樹著、文春文庫、2011年)の文庫版「あとがき」に、「あなたなしでは生きてゆけない」というフレーズには「連帯を通じて自立する」ための逆説的な理路(ものごとの筋道)がある、そして、真の自立は「その人なしでは生きてゆけない人」の数を増やすことによって達成される、「連帯を通じて自立する」という言葉には、「共生」の意味合いがある、と述べられている。
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