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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、年初来安値更新後に急反発

連載 2018-08-27


マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、年初来安値更新後に6月中旬以来の高値を更新する荒れた相場展開になった。

 お盆休み中の薄商いの中、上海ゴム相場の急落を受けて、8月16日には1キロ=164.60円まで下落し、年初来安値を更新した。しかし、21日の取引で上海ゴム相場が突然に急反発すると、東京ゴム相場も地合を引締め、22日には一時180.80円まで上値を切り上げている。翌23日には戻りを売られているが、170円台中盤の最近としては高値圏を維持した状態にある。

 上海ゴム相場は8月10日の1トン=1万2,740元をピークに、16日の1万1,585元まで急落していた。しかし、21日の取引終盤に突然に買い圧力が強まり、22日高値は1万2,855元に達している。

 東京ゴム相場は上海ゴム相場の荒れた相場展開に振り回されているが、値下り圧力に関しては産地現物相場の下落によって説明が付く。産地集荷量が安定する中、1万2,000元台維持に失敗してコアレンジを切り下げている。問題は21日以降の急伸相場だが、マーケットでも明確な理由付けはできていない。一応は、インド国内の洪水被害が材料視された可能性なども指摘されているが、インドの生産規模を考慮すれば無理があろう。上海ゴム相場では9月限から2019年1月限へのロールオーバーが進んでいる特殊なタイミングにおける投機的な値動きとの評価が基本になる。

 それだけに、短期スパンではこのまま急伸する可能性も急反落する可能性もある、極めて不安定な相場環境が続くことになる。ただ、需給環境・見通しに大きな変動がみられない中での急伸圧力の持続力に対しては、疑問視する向きが多い。

 東南アジアの気象環境は総じて安定している。マレーシアがやや乾燥傾向を強めているが、ラオスなどでは逆に多雨傾向が強まるなど、生産評価は強弱まちまちの状態にある。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は、USSが8月16日の1キロ=43.07バーツに対して23日時点では43.20バーツ、RSSが同44.69バーツに対して45.33バーツになっている。上海ゴムの急伸で産地相場も強含んだが、大きな値動きには発展していない。

 マレーシア政府は、中国の「一帯一路」関連事業の停止を発表した。新興国市場が不安定化する中、インフラ投資よりも財政再建を優先する必要性を訴えている。財政面での制約は、ゴム市況対策導入の制約にもなっている。

 需給面での新規材料が乏しい中、上海ゴム相場の投機買いがこのまま収束するか、それとも更なる急騰がみられるのかが月末に向けての焦点になる。

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